子宮内膜症により生じるチョコレート嚢胞の一部(1%弱程度)は、卵巣癌化するといわれている。そのため、日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会は、昨年4月から、子宮内膜症からの卵巣癌の発生と、何らかの治療による癌化の予防効果を調べる大規模調査を開始した。

 子宮内膜症とは子宮以外の場所で子宮内膜が生育する疾患だ。現在、月経を有する女性の約1割が子宮内膜症を持っているといわれている。子宮内膜症が卵巣に生じると、血液に由来するチョコレート状の液体が溜まった嚢胞(チョコレート嚢胞)となる。

 子宮内膜症と卵巣癌の関係を示したのは、奈良県立医科大学産婦人科学教授の小林浩氏らだ。小林氏らは、静岡県内で20年以上にわたって卵巣癌検診試験を行い、チョコレート嚢胞を有する患者の0.72%に卵巣癌が発生することを明らかにしている。小林氏によると、海外の同様な研究では、約1%のチョコレート嚢胞が卵巣癌化したというデータもあるという。そのため、「ほぼ1%程度は癌化すると考えていいだろう」と小林氏。「一般的に、卵巣癌が5000人から1万人に1人の割合で発生することから考えても、チョコレート嚢胞からの卵巣癌発生率は高い」(小林氏)のだ。

今回の調査委員会の委員ともなっている小林氏は、「どのようなチョコレート嚢胞が実際に癌化するのか、その詳細を調べ、各患者の状態に合わせた最適な治療法を見出したい」と語る。

 今回の調査には、全国70の医療施設が参加する予定だ。これまでのところ、70施設中40施設において、倫理委員会の承認が得られている。また、既に患者登録を開始している施設は7施設だ。

 この調査は、4年間をかけて患者の登録を行い、その後、10年間にわたり卵巣癌の発生頻度を追跡調査する。調査においては、嚢胞の摘出術を選んだ患者群と、経過観察のみの患者群、また、内膜症による月経困難症に有効な低用量ピルなどの薬物投与を受けた患者群を分け、癌化の発生率に差があるかも調べる。