米Cell Genesys社の前立腺癌用ワクチン「GVAX」は、単剤で進行前立腺癌に効果を示す結果が臨床試験で得られているが、同社は新たに、米Medarex社と米Bristol-Myers Squibb社が共同開発中のCTLA-4受容体を標的とする完全ヒト抗体製剤「MDX-010」(イピリムマブ)と共に「GVAX」を前立腺癌の治療に適用するフェーズI試験を進めている。

 この臨床試験を行っているオランダVrije大学医療センターのSaskia JAM Santegoets氏は、2008年4月15日、免疫治療を併用する戦略の最新のデータを米癌研究学会(AACR)の年次総会で報告した。得られた結果は、2剤併用が細胞性免疫を誘導したこと、その活性と、血清中の前立腺癌特異抗原(PSA)レベルの減少を指標とする抗腫瘍効果の間に相関が見られたという。

 Cell Genesys社が開発している「GVAX」は、患者特異的なワクチンではなく、既製(off-the-shelf)ワクチンだ。前立腺癌の他に、白血病と膵臓癌を標的とする製品が臨床試験段階にある。これらは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を生産するよう癌細胞に改変を加えて放射線を照射したもので、外来での注射が可能だ。

 今回Santegoets氏らは、フェーズ1の用量漸増段階に参加した12人の転移性ホルモン不応性前立腺癌患者から採取した血液を分析し、T細胞、樹状細胞、液性免疫にどのような影響が及んでいるのかを評価した。

 「GVAX」の投与量は全ての患者について同一。最初に5億個の細胞を注射し、その後隔週で3億個を24週まで投与した。

 一方、イピリムマブについては、12人の患者を3人ずつ4群に分けて、それぞれ0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kgに割り付け、4週ごとに投与した。患者のT細胞の活性はイピリムマブの用量に依存して上昇、これとともにPSA値は低下していた。

 1-5mg/kgのイピリムマブと「GVAX」の投与を受けた患者では、血液中のメモリーT細胞の割合が増加。3-5mg/kgのピリムマブと「GVAX」を投与された患者では、T細胞表面におけるHLA-DRの発現上昇が見られた。これはT細胞の活性化が起きたことを意味する。活性化された樹状細胞の増加も見られた。抗PSA抗体が検出された患者はいなかった。

 これらのデータは、「GVAX」とイピリムマブの併用が前立腺癌患者に細胞性免疫反応を誘導、これにより持続的なPSA値の低下がもたらされた可能性を示している。

 このフェーズ1試験の目的は、2剤併用の安全性を評価し、「GVAX」と併用した場合のイピリムマブの最大忍容量を決定することにあった。

 既に28人の患者が登録されており、うち12人が用量漸増試験に参加、残る16人は拡大コホートとなっている。拡大コホートに関する最新のデータは、2008年の米臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で報告される予定だ。

 12人の患者に関する最初のデータは2007年6月にASCOで報告された。

 イピリムマブ3mg/kg群と5mg/kgの計6人の患者のうち、5人でPSA値がベースラインの半分より下になり(2人は95%超の低下を経験)、4人についてはこの状態が6カ月以上持続した(最長は16カ月)。

 癌関連抗原である前立腺特異的膜抗原(PSMA)、NY-ESO-1、フィラミンBなどに対する広範な液性免疫の誘導も見られた。これは「GVAX」を単独で前立腺癌に適用したフェーズ2試験で見られたと同様の結果だ。

 さらに6人中4人に臨床反応も見られた(骨転移が完全に消失した患者が2人、腹部リンパ節への転移が消失した患者が1人、骨の痛みが軽減した患者が1人)。

 有害事象としては、イピリムマブの臨床試験で見られたと同様のグレード2または3の免疫仲介性内分泌機能不全が5人に発生したが、標準的なホルモン補充療法で改善。5mg/kg群の1人の患者は用量を減らさざるをえないグレード3の肺胞炎を発症したが、ステロイド治療で治療可能であった。