従来から子宮頸癌検診として行われている細胞診に、ヒトパピローマウイルスHPV)検査を併用することで検診の精度が向上することが、国内の多施設共同研究で確認された。HPVは長期間感染が継続することで子宮頸癌の原因となるウイルスだ。成果は、自治医科大学附属さいたま医療センターの今野良氏により、4月12日〜15日までに横浜市で開催された日本産科婦人科学会学術講演会で発表された。

 今回の研究では、20歳以上の子宮頸癌検診受診者2931人を対象に、1)細胞診単独、2)HPV検査単独、もしくは3)細胞診とHPV検査の併用において、子宮頸癌の前癌病変である中等度異形成以上の病変の検出率に差があるかを検討した。中等度異型性とは前癌病変であるが、この段階で厳密な経過観察もしくは治療を行うことで、子宮頸癌への進展を予防できると考えられている。

 研究では、1)、2)のいずれかの検査で陽性の場合に、コルポスコープ(腟拡大鏡)を用いた精査を行い、何らかの異常が見られた場合に、組織診で病変の有無を確認した。

 組織診の結果、50人(1.71%)に中等度異形成以上の病変が見つかった。なお、検診対象者全体の中でHPVが陽性であった割合は9.96%であった。

 細胞診単独による病変の検出感度は86.0%、HPV検査単独では94.0%であった。すなわち、細胞診もしくはHPV検査単独では、病変を有していても検診では正常と判断される場合が、それぞれ少なくとも14%、6%存在していたということになる。両方の検査を併用すると、見落としをゼロに近づけるのに役立つことが明らかになったわけだ。

 子宮頸癌検診による見落としは、わが国ではまだ、あまり問題視されていない。しかし現実には、子宮頸癌検診を毎年受けていたにも関わらず、前癌病変が見逃され、癌がかなり進行した段階になってから発見されたという患者が後を絶たないようだ。今回のデータは、HPV検査を併用することで、細胞診のみでは不十分な検診精度を向上できることを示したといえる。ただし、HPV感染イコール発癌ではないため、むやみに検診に導入すると不要な要精査を増やし、被験者に対しても無用な心配を強いることになりうる。

 今野氏は、「この研究ではHPV感染率を調べる目的もあり、HPV検査の対象者を20歳以上とした。しかし、20歳代の女性では半数近くがHPVに一時的に感染しているというデータもある。また、HPVは感染が継続しなければ子宮頸癌の発症原因とはならない。そのため、検診としてHPV検査の導入を検討するならば、米国同様に30歳以上と考えるべきだろう」と説明した。

 海外では既に、細胞診とHPV検査を併用することで、子宮頸癌の検診精度が高まるという研究が報告されており、HPV検査は子宮頸癌検診に導入され始めている。米国がん協会(ACS)は、30歳以上の女性において、細胞診にHPV検査を併用した検査で陰性の場合は、子宮頸癌検診の検診間隔を延長できるとするガイドラインを作成している。今野氏は、両検査で陰性の場合にはわが国でも検診間隔の延長に寄与するだろうと見通しを語った。