小児癌、特に白血病の生存率は過去30年間に大きく上昇した。しかし、この病気から生還し成長した若者の中には、健康上、生活上に問題を抱えている人も少なくないようだ。米Michigan大学小児科のRajen Mody氏らは、診断から25年を経た小児癌経験者を対象とする調査の結果をBlood誌電子版に2008年3月11日に報告した。

 急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、小児白血病の中で最も一般的だ。米国では毎年約3000人が新たにALLと診断される。治癒率は向上しており、5年生存率は80%を超えている。しかし、幼少期に受けた強力な治療がその後の人生に影響を及ぼす可能性がある。

 Mody氏らは、1970〜1986年にALLと診断され、小児期に癌との戦いに勝利した患者を長期にわたって追跡、診断から25年後までの健康状態と社会経済的な状態をALL歴のない兄弟と比較する大規模かつ総合的な研究を実施した。放射線治療歴の有無と診断から5年以内の再発の有無がその後の人生に及ぼす影響についても評価した。

 対象となったのは、診断時に21歳未満でALL診断から5年生存していた患者5760人。質問票に回答した4151人(86%)について分析、健康な兄弟3899人と比較した。

 5年生存者の25年後の生存率は87%と高かった。亡くなった患者の死因は、ALL再発が483人、その他の癌が89人だった。

 健康面では、小児癌経験者の少なくとも半数が慢性的な問題を抱えていた(累積罹患率は65%)。ALL歴のない兄弟に比べ経験者が慢性の健康問題を有する頻度は2.8倍だった(オッズ比2.8、95%信頼区間2.4-3.2)。重症または生命を脅かす疾患に限定すると、オッズ比は3.6(同3.0-4.5)。

 最も一般的だったのは、筋骨格、心臓、神経系の症状だった。ALLでなかった兄弟に比べ、元患者は、健康状態が好ましくなく、精神的な問題も抱えており、活動には制限があり、機能不全も有意に多かった(P<0.0001)。

 放射線治療と再発の有無は、経験者の慢性疾患リスクに影響を与えていた。

 全生存率は、放射線治療を受けた患者の方が低く87%。放射線治療無し群では96%だった。診断から5年以内に再発を見た患者では生存率は63%に留まり、その間に再発しなかった患者は93%と高かった。

 診断から25年間の、死亡も含む重症疾患の累積罹患率は21.3%(95%信頼区間18.2-24.4)。放射線治療歴有りでは23.3%(同19.4-27.2)、無し群では13.4%(同8.4-18.4)だった。

 経験者の社会経済的な状況は、結婚、大学卒業、医療保険有り、などの頻度が健康な兄弟に比べ有意に低かった(P<0.001)。経験者は、男性か女性かにかかわらず無職者が多かった。

 再発の有無は、男性の雇用率以外の社会経済的要因に影響を与えていなかった。しかし放射線治療は、そうした状況に大きな影響を与えていた。放射線治療歴のある女性経験者では、結婚、大学卒業、医療保険有り、の頻度が有意に低く、放射線治療歴のある男性では教育歴が低かった。

 こうした結果は、診断から5年生存を達成したALL患者は、その後長期間生存する可能性が高いこと、放射線治療無しで再発無しの経験者の予後と生活の質は一般の集団とほぼ同等になるが、再発または放射線治療歴がある経験者はその後も慢性症状に苦しみ、生活の質が低い状態を続けていることを示唆している。

 現在、国内においても、小児癌診療は、生存のみでなく、患者の長期的な生活の質も重視した治療が行われている。そのため、今後、治療終了後の小児癌経験者の生活の質は改善されていくと期待したい。ただし、その一方で、既に成人になっており、強い治療を受けた小児癌経験者に対する、健康管理支援の充実が必要だろう。