およそ5〜10%の乳癌患者には乳癌の家族歴があることが知られている。これは、遺伝的な要素、具体的にはBRCA1BRCA2遺伝子の変異は家族性乳癌に関わっており、この2つの遺伝子変異は家族性乳癌のおよそ25%に関与している。では、残りの75%はどのような遺伝的要因が関わっているのか。

 ドイツのFamilial Breast and Ovarian Cancersコンソーシアムのグループは、AKAPファミリーという遺伝子群のうち、6つの遺伝子バリアントについて解析した結果、2つの遺伝子バリアントはAKAP9遺伝子由来で、乳癌のリスクを増加させることに関連していることを明らかにした。結果は、Journal of the National Cancer institute誌vol.100 page1 2008に掲載される。遺伝子バリアントとは、1つの遺伝子から複数のたんぱく質が生合成される場合の各々のたんぱく質を指す。

 この2つの遺伝子バリアントは常に一緒に遺伝するため、この2つのうちどちらか、あるいは両方がリスクに影響するかを解析する必要があるが、BRCA遺伝子とは違う家族性発症にかかわる遺伝子がまた1つ見出されたといえそうだ。AKAP遺伝子ファミリーは、細胞内でシグナル伝達にかかわる因子として知られている。


 この研究は、9523例の乳癌患者(そのうち2795例は家族性乳癌)と1万4000の乳癌患者ではない女性を対象に行われたもので、ドイツ、英国、米kok、オーストラリアの研究者が参加した。

 AKAP9遺伝子に由来する2つの遺伝子バリアントを持つ場合、乳癌を発症するリスクは17%高まることが明らかになった。乳癌の家族歴を持つ女性では2つの遺伝子バリアントの寄与は高まり、27%だった。AKAP9遺伝子の遺伝子バリアントのうち1つだけの場合は、乳癌発症リスクは8%、乳癌の家族歴を持つ場合は12%に下がることも明らかとなった。

 これらの結果により、AKAP9遺伝子の遺伝子バリアントはBRCA遺伝子の変異と比べ、乳癌のリスクへの寄与は少ないといえる。ただし、このAKAP9遺伝子バリアントは、より頻度の高いもの。この2つの遺伝子バリアントは肺癌、大腸癌発症リスクにも関わっていることが知られており、今後、どれくらい細胞内のシグナル伝達に関わり、乳癌発症に寄与するかさらに詳細に解析する必要がある。