日本医科大学付属病院薬剤部長の片山志郎氏

 オピオイドを使った緩和ケアの副作用に悪心嘔吐や腸間蠕動運動がある。この副作用に対して抗ドパミン薬などが使われるが、この抗ドパミン薬や抗精神病薬によって別の副作用が発生する場合がある。それがアカシジアと呼ばれる薬原性錐体外路症状だ。

 日本医科大学付属病院薬剤部長の片山志郎氏は、精神神経作用薬の投与によって約3割から半数にアカシジアが発生することを指摘。鑑別を迅速に行い、適切に対応すべきと主張した。これは、3月15日に開催された第5回オンコロジーセミナーのランチョンセミナー「緩和医療における副作用対策──嘔気対策とアカシジア」(共催:田辺三菱製薬)で発表した。

 癌における疼痛管理にオピオイド(モルヒネ)が使われるが、モルヒネの投与によって主に3通りの機序により嘔気・嘔吐が発生してしまう。(1)直接、第四脳室の化学受容器引金帯(CTZ)を介して延髄の嘔吐中枢(VC)を刺激してしまう場合、(2)胃内容物の停留によって胃内圧が増加し、これによってCTZやVCが刺激される場合、(3)乗り物酔いなどで刺激される前庭器を介してCTZ、VCをシグナルが伝わる場合──だ。

 (1)の場合はプロクロルペラジンやハロペリドールなどのメジャートランキライザー、(2)の場合はメトクロプラミドやドンペリドンなどの胃内容物排泄促進剤、(3)の場合はクロルフェニラミンやヒドリキシジンなどの抗ヒスタミン薬が使われている。

 ここで抗ドパミン薬や抗精神病薬を投与した場合、不眠や強い焦燥感が発症することがある。また多動などの身体症状が発症することもある。これらは薬原性錐体外路症状でアカシジアであることがある。

 薬原性錐体外路症状(Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms)はもともとアキネジアというパーキンソン様症状がよく知られており、発症時期は数週間から3カ月と考えられてきた。

 しかし、不眠や強い焦燥感、持続的な激昂、静止不能などの症状が現れるアカシジアは投与直後から数日以内に発症することが多い。ブチロフェノン系であるハロペリドールや40〜50%、フェノチアジン系のプロクロルペラジンでは30%程度の頻度で発生することが指摘されており、注意が必要とした。特に不眠や焦燥感から睡眠薬や抗ドパミン薬を投与してしまうと薬原性アカシジアの症状は悪化するため、鑑別が重要だとした。

 薬原性アカシジアの対策のポイントは、特に吐き気に対して抗ドパミン薬を投与されている症例かどうかを確認することだ。薬原性アカシジアに対する第一選択薬は抗ヒスタミン薬で、アカシジアであれば急速に症状が抑えられるという。これが鑑別にもなる。そして、モルヒネの減量には入らず、抗ヒスタミン薬への切り替えを継続すべきとした。