がんサバイバーの増加に伴い、今後、リンパ浮腫を抱える患者数は増加すると予想される。千葉大学医学部附属病院看護部教育・研修室看護師長でがん看護専門看護師の奥朋子氏らは、第22回日本がん看護学会学術集会で、リンパ浮腫ケアに関する現状の問題と課題を講演した。

 調査は、全国の医療機関、看護学教育機関8施設でリンパ浮腫ケアに携わる、あるいはリンパ浮腫ケアに関心の高い看護師9人が対象で、リンパ浮腫に対する看護を提供する時に直面する問題、適切なリンパ浮腫ケアを提供するために必要とされる課題について討議した。リンパ浮腫ケアにおける看護師が果たす役割と専門性を検討するのが目的だ。

 討議の結果、リンパ浮腫ケアにおける現状として、以下の9点が指摘された。

(1)リンパ浮腫に関する知識が社会的に普及していない。
(2)リンパ浮腫を軽減する技術が保険適応となっておらず費用が一定でない。
(3)リンパ浮腫の専門家の数に対して患者数が多く対応しきれていない。
(4)複数の職種がリンパ浮腫を軽減する技術を提供し質が統一されていない。(美容マッサージ施設で不適切なケアを受ける患者がいるなど)
(5)リンパ浮腫を軽減する技術には明確な効果を立証した研究が少ない。(リンパ浮腫ケアには明確な効果やエビデンスがないまま行われているケアもある)
(6)全ての看護師がリンパ浮腫に関わる知識をもち患者と関わっているわけではない。(リンパ浮腫ケアについて適切な知識を持たないまま看護師が患者指導をする現状があるなど)
(7)リンパ浮腫を軽減する技術は一般化が難しく全ての看護師が実践できるわけではない。
(8)リンパ浮腫ケア専門の看護師としての位置付けが確立していない。(病院内にリンパ浮腫ケアを行える看護師がいても診療科や病棟・外来の場を超えて活動することは難しいなど)
(9)医療行為であるため医師の理解・協力を要する。(看護師が複合的理学療法を行う場合は医師の指示が必要であり、看護師の判断でケアを開始することができないなど)

 リンパ浮腫ケアにおける課題としては7つの点が指摘された。

(1)医療者が専門的に関わるリンパ浮腫ケアを明確にする必要がある。
(2)リンパ浮腫ケアにおける看護の専門性を確立する必要がある。
(3)リンパ浮腫ケアについて最新かつ適切な知識を取り入れる必要がある。
(4)リンパ浮腫を早期に発見する必要がある。
(5)リンパ浮腫ケアの実態やケアの効果を示す必要がある。
(6)効果的なリンパ浮腫ケアを開発する必要がある。
(7)患者の疾患や心理もふまえた専門的な関わりが必要である。

 奥氏は、「医療行為であることから、医師の積極的な協力が必要だ。また、“仕方がないこと”と考えず、対処することでQOLが向上し、また患者自身でも実施できるという自信につながっている。施術中に看護師と話し合うことで癌と向き合う姿勢も形成される」と、看護師が関わる強みを指摘した。

 折しも、中医協基本問題小委員会で新規医療技術の評価・再評価が進められ、今年1月、診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会で、「リンパ浮腫誘導手技料・指導料」「四肢リンパ浮腫に対する弾性着衣を用いた圧迫療法」について、保険適用する優先度が高いと考えられる新規技術とされた。そして、現在、「リンパ浮腫の治療・指導の経験を有する医師又は医師の指示に基づき看護師、理学療法士が、子宮悪性腫瘍、子宮附属器悪性腫瘍、前立腺悪性腫瘍又は腋窩部郭清(腋窩リンパ節郭清術)を伴う乳腺悪性腫瘍に対する手術を行った患者に対し、手術前後にリンパ浮腫に対する適切な指導を個別に実施した場合の管理料を新設する」という内容で中医協で議論が進んでいる。今後、リンパ浮腫ケアのさらなる質の向上が求められていくといえそうだ。

 この研究で討議した9人と分析を担当したのは、奥氏のほか、千葉大学看護学部の増島麻里子氏、滋賀医科大学の作田裕美氏、金沢循環器病院の片山美豊恵氏、真奈美鍼灸整骨院の吉川綾子氏、国立がんセンター中央病院の石岡明子氏、和泉秀子氏、筑波メディカルセンターの佐々木智美氏、中辻香邦子氏、石巻赤十字病院の菅原よしえ氏、富山県立中央病院の酒井裕美氏、広田内科クリニックの川北智子氏、青森県立保健大学の木村恵美子氏、群馬県立がんセンターの櫻井通恵氏、京都府立医科大学附属病院の冨田英津子氏だ。