これまで、胃癌の腹膜播種に抗癌剤の全身投与を行っても、腹膜血液関門が存在するために、効果が低いとされてきた。しかし、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)の腹腔内での薬物動態を調べたところ、薬剤は腹膜をダイレクトに通過し、しかも腹腔内の胃癌細胞に選択的に取り込まれることが明らかになった。横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センターの大島貴氏が、第4回日本消化管学会で発表した。

 大島氏らは、倫理委員会の承認の下、同意の得られた腹膜播種が疑われるT3症例14例にS-1を内服してもらい、血液、腹水、腹膜、大網、腹膜播種結節を採取して、5-FUおよびCDHPの濃度を測定した。その結果、両剤とも、内服3時間後には、血液中に50ng/mL以上の有効血中濃度で存在するのに加え、腹水中にもほぼ同濃度で存在することがわかった。

 腹膜の部位ごとに両剤の濃度を調べたところ、壁側腹膜で最も高く、腸間膜、大網の順で有意に低下していた。さらに、腹膜播種結節と近接腹膜での両剤の濃度を調べたところ、5-FUの腹膜播種結節濃度は、近接腹膜よりも有意に高かった(p=0.0496)。大島氏は、「S-1の血中濃度には、個人差も大きかった。今後、この違いが予後に何らかの関係を及ぼしているのか、検討していきたい」と話した。

 さらに、現在は手術では切除できない腹膜播種を伴う胃癌患者にS-1単剤投与をファーストラインとしているとした上で、「単剤の方が、患者の服薬コンプライアンスがよく、QOLも高い印象がある。他薬剤との併用については、ファーストラインから行うべきか、セカンドライン以降にすべきか、検討していくべき課題」とした。