乳癌遺伝子BRCA1とBRCA2の変異の存在を調べる遺伝子検査を未成年に受けさせることの是非について、BRCA変異キャリアとその子供たちに意見を問うた研究の結果が、American Journal of Medical Genetics誌電子版に2008年1月15日に報告された。

 米国では専門家の多くが、成人してから発症する病気で、早期に変異を検出しても医学的な利益がない場合については、未成年に対する遺伝子検査は行うべきではないとの見解を示している。

 BRCA変異キャリアは必ず癌になるわけではない。しかし、女性の場合は乳癌と/または卵巣癌のリスクが上昇する。男性でも、これら遺伝子の変異が、乳癌の他、前立腺癌、膵臓癌などのリスクを上昇させると報告されている。リスク低減策としては、予防的切除、より頻繁な検査、化学予防があげられるが、それらは25歳未満には推奨されない。

 こうした変異に対する検査を未成年に対して行うべきかどうかに関する議論は広く行われてきたが、実際にBRCA変異キャリアの家族を対象とする調査はこれが初めてだ。

 米Fox ChaseがんセンターのAngela R. Bradbury氏らは、BRCA変異キャリアで、自身の遺伝子検査の結果を知った時点で25歳以下の子供を持っていた53人(親世代)と、既に成人しており親がキャリアであることを知っている子供たち22人(子世代)を対象に、半構造化面接を実施した。

 親の世代の89%は女性だったが、子供の世代では45%が男性、55%が女性だった。

 未成年に対する検査に反対と答えた人は全体の52%。賛成派をあわせると40%になったが、24%は特定の条件下のみでと条件を付けた。

 反対理由としては、心理面への悪影響を上げた人が多く、賛成理由としては、結果を知っていればより健康に配慮した生活がおくれるようになるから、が多かった。

 しかし、遺伝子検査に対する知識を持ち、抵抗が少ないと思われる子世代に限定すると、多くが検査の実施に賛成していた。従って、次世代の親は、たとえ成人になるまでリスク低減策は利用できないとしても、未成年の子に対する検査を支持する可能性が示唆された。

 Bradbury氏は「興味深い結果ではあるが、さらに大規模な調査を行って結果を確認する必要がある。が、遺伝検査の需要が増加し、容易に利用できるようになりつつある現状を見ると、早期のカウンセリングと/または検査のリスクと利益を人々に十分に伝えることの重要性が増しているといえる」と述べた。

 一般の議論においても、未成年に対する検査を支持する人は、情報を与えずに置くことは有害で将来的に診断ミスにつながる可能性がある、と述べ、反対派は、早期の検査が心理面に悪影響(病気に対する不安)を及ぼし、家族関係にゆがみを生じさせて、未成年者の自己概念の正常な形成を妨げる危険性がある、などと述べている。

 心理的、医学的な結果を最善のものにするためには、未成年に対する遺伝検査実施の利益とリスクを評価し、時代の流れに沿った最適な方針を提示することが必要だ。