BRCA1とBRCA2は乳癌リスクを高める遺伝的変異だ。これらの変異がもたらすリスクについて調べた研究は多いが、個々の変異保有者(キャリア)のリスクレベルの差に関心が向けられることはほとんど無かった。米Memorial Sloan-KetteringがんセンターのColin B. Begg氏らは、BRCA変異を持つ乳癌患者の1親等の女性の乳癌発症について調べて、他の要因がリスクの高低に影響を与えることを示唆した。詳細はJAMA誌2008年1月9/16日号に報告された

 研究者たちは、Women's Environmental Cancer and Radiation Epidemiology (WECARE)研究の被験者の1親等の親族に注目した。

 集団ベースのケースコントロールであるWECAREは、初めての乳癌診断が55歳未満で、1985年1月-2000年12月の間患者だった人のなかから、1年以上たって対側にも乳癌が発生した女性(ケース)と、乳癌が初発の片側だけに留まったマッチドコントロールを選んで行われた研究だ。今回は、それら被験者のBRCA1、BRCA2遺伝子の変異について調べ、さらに電話で接触して、1親等の女性の乳癌発症の有無を尋ねた。

 WECAREのコントロール(片側乳癌患者)1394人のうち73人(5.3%)が有害な変異を持っていた(42人がBRCA1、31人がBRCA2の変異)。ケース(対側も乳癌となった女性)704人ではその数は108人(15.3%)だった(67人がBRCA1、41人がBRCA2の変異)。

 これら2098人の患者の1親等の親族のうち1565人(全体の75%)は乳癌を発症していなかった。BRCA1キャリアの親族では42%、BRCA2キャリアの親族でも42%が乳癌を発症していた。

 やはりキャリア親族の乳癌リスクは非キャリアの親族より有意に高かった。BRCA1キャリアの親族では2.4倍、BRCA2キャリアの親族では2.6倍だった。

 キャリア親族の乳癌リスクとの関係が有意だったのは、WECARE被験者となった患者の乳癌発症年齢だった。45-54歳で発症した患者に比べ、35歳未満で発症した患者の親族の乳癌リスクは2.2倍だった(P=0.04)

 また、片側乳癌患者の親族より、対側にも乳癌が見つかった患者の親族のほうがリスクは高い傾向が見られた(オッズ比1.4、P=0.28)。

 さらにBRCA1キャリアについてみれば、同じ1親等でも、患者の母親の乳癌リスクを1とすると、娘のリスクは4.6倍だった(P=0.03)。

 今回は、BRCA1、BRCA2の変異の有無が判明している患者の1親等の女性(キャリアかどうかは不明)のリスクを調べた研究で、遺伝的変異以外の危険因子の乳癌リスクに対する影響を直接評価したわけではない。しかし、変異以外にもリスクを上下させる要因があることは示された。

 BRCA1、BRCA2スクリーングにより陽性と判定された女性に対する予防的な措置について判断を下す場合には、変異以外の危険因子も含めて、本人のリスクを正確に推算することが必要だ。リスク評価が詳細に行えるようになれば、テイラーメードの予防策適用が可能になるだろう