米Dan L Duncan Cancer Center Baylar College of Medicine のJenny C. Chang氏は、乳癌幹細胞であるCD44抗原陽性かつCD24抗原陰性細胞を取り除く治療法が重要であり、分子標的薬であるラパチニブにその活性があることを見出した。成果は、12月13日から16日に開かれたサンアントニオ乳がんシンポジウムで発表した。

 Chang氏は、癌細胞を“たんぽぽ”に置き換え、“たんぽぽ”の草むしりをしても根を抜かなければまた生えてくると引用。その根の部分にあたるのが幹細胞であるCD44+陽性CD24陰性細胞であると強調した。そして、通常の癌細胞は増殖が速いため、化学療法で殺傷できるが、癌幹細胞については増殖が遅いため殺傷されにくいことを指摘した。実際に35人の乳癌患者で術前化学療法を受けた臨床検体をバイオプシーで得て、フローサイトメトリーで細胞の種類を調べたところ、相対的に乳癌幹細胞が増えていることを確認した。

 そこで、癌幹細胞を取り除くには幹細胞の自己増殖に関わる経路を阻害することが大切であると指摘、チロシンキナーゼ阻害剤でAkt経路、MAPキナーゼ経路を阻害できるラパチニブにがん幹細胞を取り除ける可能性があることを示した。ラパチニブと化学療法を併用すれば、高い治療効果が得られることになる。

 Chang氏は、HER2過剰発現で局所進行性の乳癌患者を対象に術前にラパチニブを6週間投与し、その後トラスツズマブとパクリタキセルを12週間投与、その後、バイオプシーで検体を採取してから手術を行うフェーズ2臨床試験を行なった。対象者は40人。腫瘍サイズは中央値で10cmだった。バイオプシーはラパチニブ治療前後にも行った。

 その結果、ラパチニブの投与から6週間後の完全奏効(CR)は6%(2/33)、部分奏効(PR)は76%(25/33)、安定状態(SD)が18%(6/33)、増悪(PD)が0%(0/33)でCRとPRを合わせた奏効率は82%だった。

 乳癌幹細胞はラパチニブ投与前には十分に存在したがラパチニブ治療後の6週目で大きく減少していることが確認された。また、Chang氏は術前治療の病理学的な効果は完全奏効率(pCRとnpCRce response rate)が62%と当初に期待していた以上の結果を得たことを強調した。