難治性進行乳癌患者を対象に行われたラパチニブ単剤療法において、HER2陽性であり、前治療でトラスツズマブ治療を受けた患者群で抗腫瘍活性が高いことが明らかとなった。また、PIK3CA(PI3K P110αサブユニット)に特定の変異があるとラパチニブの抗腫瘍効果が高まることが実際の臨床検体で初めて確認された。患者の種々のバイオマーカーを調べた結果明らかとなったもので、12月13日から16日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウムで、京都大学の乳腺外科学教授の戸井雅和氏によって発表された。

 戸井氏らは、難治性進行乳癌患者へラパチニブ単剤療法を行い、バイオマーカーを解析した。対象は難治性の進行乳がん患者で、HER2陽性群45人(A群)とHER2陰性群22人(B群)とに分けられた。HER2陽性者にはトラスツズマブによる治療が実施されていた。

 バイオマーカーは、PTEN、BCL2、上皮成長因子受容体(EGFR)、インスリン様成長因子受容体(IGF1R)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体などが免疫組織染色(ICH)法によって分析された。

 解析結果は、HER2陽性者における部分奏効(PR)は24%、奏効率は24%、安定状態であるSDが得られた例を合わせると疾患制御率は69%となった。一方B群は完全寛解(CR)が1例、PRが0例、SDが3例で疾患制御率は18%だった。また、24週以上SDが継続したのはA群では20例中5例(25%)だったのに対して、B群では1例もなかった。

 A群ではエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体ともに陰性の患者が71%を占めたが、B群では55%がエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体ともに陽性だった。また、BCL2発現とER発現との関連性が示され、PTENの発現に関しては、HER2との関連が高く、HER2陽性群での発現が高度にみられた。一方、ラパチニブによる単剤療法の効果において、 PTENの発現は重要な関連性は示されず、さらに、EGFRやIGF1Rの発現とラパチニブやTTP(無増殖期間)との重要な関連性についても示されなかった。

 しかし、特にPIK3CAの突然変異と治療効果の関連の重要性が示された。基礎試験でラパチニブの効果との関連が示唆されているエクソン20のH1047Rという変異を持つA群の患者3例では、ラパチニブの効果が高く、32週間のPR、16週間のSDが2例で得られた。また、エクソン18と15に変異があり、ラパチニブの効果があった症例も見つかり、エクソン18でT898Iという変異があったA群の患者ではSDが24週以上継続し、エクソン15でE767Kという変異のあるB群の患者では完全寛解が得られた。

 戸井氏は、 HER2陽性を始めとしたバイオマーカーの分析は世界共通の研究課題である点を強調し、現在、 更なる解析が進行中で、3年後頃にはバイオマーカーによる新たな治療戦略が期待できることを指摘した。