成人脂肪組織由来の幹細胞を乳癌切除後の乳房の再建に利用した、わが国で行われた世界で初めての研究成果が発表された。組織の厚みは十分に増し、患者の満足度も高かった。成果は12月13日から16日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウムで、九州中央病院の北村薫氏によって発表された。

 実施された乳房再建術は、米Cytori Therapeutics社の閉鎖型全自動幹細胞分離装置である「Celution System」を用いて、自己の脂肪細胞から分離した幹細胞を利用するもの。幹細胞は分離精製され、洗浄した脂肪とともに移植グラフトが作られる。そのグラフトを14G針付シリンジで0.1から0.2ccずつ標的部位に移植した。

 臨床研究は21人(年齢29〜59歳)25症例に対して実行された(複数回数有り)。全例が乳房温存術後で、うち19人は外科的治療後に放射線治療(50〜60Gy)を受けていた。全例とも最長13カ月以上の経過観察中、乳癌の再発および転移は認められていないという。

 組織の厚みは移植前が6.1mmだったのが移植1カ月後で16.0mmとなり、6カ月後の最終評価でも14.4mmが維持されていた。また、患者自身による満足度評価でも79%が満足と答えていた。

 移植術による明らかな有害事象はなく、1例のみ脂肪吸引による内出血が認められた。移植部位での明らかな皮膚障害はなく、明らかな感染症や炎症反応もなかった。移植後の追加治療もなかったという。