乳癌の危険因子としては遺伝的素因や生活要因などが知られているが、実は、人種的、文化的な差や貧困などが患者の予後に有意な影響を与えていることが明らかになった。11月27-30日に米Atlantaで米がん研究学会(AACR)が開催した「人種的/民族的マイノリティと医療サービス不足地域におけるがん医療格差のサイエンス」と題された会議で、実態が報告された。

アフリカ系米国人はマンモグラフィーで発見された早期乳癌の予後が悪い

 米Chicago大学のMichael A. Nichols氏らは、マンモグラフィー・スクリーニングでステージIまたはIIの浸潤性乳癌と診断され、乳房温存術と放射線照射を受けた患者を8年間追跡した。人種以外の要因は全て同じであるにもかかわらず、無病状態が続いている患者の割合はアフリカ系米国人が78.1%、非黒人患者では84.9%だった。

 マンモで発見される腫瘍の大きさは同じであっても、アフリカ系米国人の予後は悪かった。これは、アフリカ系米国人の乳癌は、早期でも悪性度が高い可能性を示す。従って、これらの女性には、より頻繁にマンモを行うか、より感度の高い方法、たとえば、MRI等を用いれば、長期的なアウトカムが向上すると考えられた。

東洋人の女性は乳房温存術でなく乳房切除術を選ぶ頻度が高い

 北カリフォルニアがんセンターのScarlett Lin Gomez氏らは、中国人、ベトナム人、フィリピン人が受診する地域の医師を対象に調査を実施した。その結果、早期乳癌でも、東洋人女性は乳房温存術より乳房切除術を選ぶ頻度が高い(67.5%、白人では57.3%)ことが明らかになった。さらに、過去10年間に多くの集団で乳房切除術の適用が減少したが、東洋人女性については減少が緩やかだったという。

 研究者たちは、乳房とその外観を重要視しない東洋的な文化が選択に大きく影響していることを知った。それ以外の理由として、もともと乳房が小さいから温存できる部分も小さい、温存術後に行われる化学療法や放射線治療の有害事象に対する恐れ、それらの治療を受けるための頻回の受診が億劫、再発への恐怖などがあげられたという。

 研究者たちは、乳房切除術を選ぶ理由を知ることは大切だと考えている。早期乳癌では、温存術と乳房切除の間で生存期間に差はない。温存術のほうが侵襲性は低くQOLが高い。東洋人の考え方を理解しながら、十分な情報に基づいて選択ができるよう働きかける必要がある、と述べている。

社会経済的地位が低い乳癌患者の肥満は再発リスクを高める

 ルイジアナ州健康科学センターのAmanda Sun氏らは、社会経済的地位が低い女性とアフリカ系米国人を高頻度に含む集団を対象とする研究で、乳癌診断時に肥満または過体重だった女性の再発リスクは有意に高いことを発見した。

 BMI 1ポイント上昇あたり再発率は4%上昇。これは、BMI30の女性の再発リスクは、BMI25以下の患者より20%高いことを意味する。肥満によるリスク上昇は、閉経後のみならず閉経前の女性にも見られた。

 研究者たちは、1990-2004年に乳癌と診断された349人の女性の医療記録を調べた。45%がアフリカ系米国人、55%が白人で、全体の25%が貧困率の高い地域に居住していた。貧困は、医療サービスの利用を制限し、予後の悪化をもたらす。米国では、貧しい成人に肥満が多い。しかし肥満は修正可能だ。体重管理により再発が抑制できる可能性はある。

 再発は69人に見られた。体重、人種、閉経前か後か、診断時の年齢、癌のステージで調整した後も、BMIはガン再発の予測因子として有意だった。

早期乳癌患者に対する腋下リンパ節検査、年齢、人種などにより適用に差

 早期乳癌で手術を受ける患者については、近傍の腋下リンパ節に転移がないかどうかを調べることになっている。しかし特定の女性においてこの検査の適用頻度が低いことが明らかになった。

 米がん協会(ACS)の研究者たちは、ACSが後援している病院ベースの癌登録に2003-2005年に記録された19万6732人の患者のデータを調べた。その結果、11%がリンパ節の検査を受けていなかったことが判明。頻度の差が有意だったのは、高齢者(73歳以上の女性は51歳以下の患者の1/3)、アフリカ系米国人(白人に比べ10%少ない)、無保険(民間医療保険加入者に比べ24%少ない)、教育レベルの低い地域の居住者(教育レベルが高い地域に比べ13%少ない)。

 腋下リンパ節の検査を行わずに病期を正確に判定することはできず、最適な治療法を選択できないため、医学的な理由から検査を断念せざるを得ない一部の高齢患者を除いて、これらの要因がリンパ節の検査適用に影響を与えてはならない、と研究者たちは述べている。