これまで、高血圧や糖尿病など、他の疾患を合併していることが多い高齢の大腸癌患者に対し、腹腔鏡手術はあまり積極的には試みられてこなかった。北里大学外科の井原厚氏は、11月19日に第20回日本内視鏡外科学会総会で、自験例の解析から、高齢者でも大腸癌の腹腔鏡手術は有用だったと発表した。

 対象は大腸癌患者200人で、70歳以上75人(平均年齢77.4歳)と70歳未満125人に分け、それぞれの患者群で、開腹手術と腹腔鏡手術を比較した。70歳以上では開腹29人、腹腔鏡46人(61.3%)、70歳未満では開腹29人、腹腔鏡96人(76.9%)と、やはり高齢者では腹腔鏡手術の割合が少ない傾向にあった。各群で、癌の組織型や占拠部位、深達度、大きさなどに特に差はなかった。

 70歳以上の群で術中出血量を比較したところ、開腹手術395.0mLに対し、腹腔鏡手術73.0mLと、有意に減少した。一方、手術時間や在院日数には特に差はみられなかった。さらに、観察期間は短いものの、5年生存率は開腹手術80.5%に対し、腹腔鏡手術93.5%と、腹腔鏡手術の方が優れている傾向にあった。

 井原氏は、麻酔の影響を考えると呼吸器疾患のある高齢者では適応を慎重に見極める必要があるとしながらも、「まだ中長期的な予後はわからないが、高齢者でも積極的に腹腔鏡手術の実施を検討してみてよいのではないか。傷が小さく、早めに離床できるというメリットは、高齢者でこそ、より実感できるかもしれない」と話した。