癌性胸膜炎による悪性胸水に対し、胸膜癒着剤であるタルク製剤が有用であることが、国内の単施設フェーズII臨床試験で確認された。国立病院機構名古屋医療センター呼吸器科部長の坂英雄氏と北川智余惠氏ら研究グループが、11月8日から9日、名古屋で開催した第48回日本肺癌学会総会のワークショップ「癌性胸膜炎と心膜炎」で発表した。

 悪性胸水に対しては、胸水排除後に、胸腔内にOK-432(ピシバニール)やブレオマイシンなどを注入して、胸水の再貯留を抑える方法が行われているが、胸膜の疼痛や発熱などの有害事象も発生する。欧米では粒子の大きさを調節した滅菌タルクがほぼ標準的に用いられており、有害事象も少ないと報告されている。

 研究では、2006年3月から2007年5月に、癌性あるいは悪性疾患による胸膜炎患者28人において、ドレナージチューブによる排液後、タルク製剤を胸腔内に注入した。28人のうち肺癌患者が21人、肺癌以外が4人、骨髄腫が2人、リンパ腫が1人だった。

 投与4週間後、胸部写真で胸水の貯留がなくタルク製剤による癒着効果が認められたのは、判定ができた21人中19人(90.4%)で、60日以上効果が持続したのは15人だった。判定できなかった7人のうち5人は死亡によるものだったが、薬剤関連死かどうかは不明であるという。

 有害事象は、グレード3の疼痛が5人、グレード5のARDS(急性呼吸窮迫症候群)が1人に、発熱はグレード1が11人に見られた。

 今回の研究で使用されたのは粒子が大きく均一の滅菌タルク製剤「STERI TALC」。同じ製剤を用いた海外の多施設共同研究では、558人の患者にタルク注入を行った結果、ARDSは見られず、30日以内の死亡は2%であったことから、タルク製剤は安全であると報告している(The Lancet , 5 May 2007; 369(9572):1535-1539)。