転移性乳癌に、ファーストラインとして、分子標的薬ラパチニブとタキサン系抗癌剤パクリタキセルを併用投与すると、ErbB2(HER2)陽性患者で高い効果が得られることがフェーズIII臨床試験の結果、明らかとなった。成果は、9月23日から27日にスペインバロセロナで開催された欧州癌学会(ECCO)で、イタリアHospital of PratoのA.Di Leo氏によって発表された。

 ラパチニブは、上皮細胞成長因子受容体のErbB1とErbB2を可逆的に阻害する低分子化合物。ErbB1とErbB2はさまざまなヒトの腫瘍で過剰発現し、予後や生存率の低下に関与しているとされている。

 発表されたフェーズIII臨床試験EGF30001はErbB2の発現がないか不明の乳癌患者を、パクリタキセルを3週おきに175mg/m2、ラパチニブを毎日1500mg投与される群(291人)とパクリタキセルを3週おきに175mg/m2、プラセボを毎日投与される群(288人)に分けて行われた。

 ErbB2の発現を調べて患者を分類したところ、ErbB2陽性の患者は91人(ラパチニブ、パクリタキセル投与群で52人、プラセボ、パクリタキセル投与群で39人)いた。ErbB2陽性患者で効果を調べたところ、増殖抑制期間(TTP:time to progression)中央値は、ラパチニブとパクリタキセルを投与した群が35.1週だったのに対し、プラセボとパクリタキセルを投与した群は25.1週となり、ラパチニブとパクリタキセルを投与した群の方が有意に長くなった。

 また、無増悪生存期間中央値でも、ラパチニブとパクリタキセルを投与した群が34.4週だったのに対し、プラセボとパクリタキセルを投与した群は22.6週だった。さらに全体の奏効率もラパチニブとパクリタキセルを投与した群が59.6%だったのに対し、プラセボとパクリタキセルを投与した群は35.9%だった。

 ErbB2が陰性だった患者(ラパチニブ、パクリタキセル投与群が199人、プラセボ、パクリタキセル投与群が202人)では、奏効率はラパチニブ、パクリタキセル投与群が31%、プラセボ、パクリタキセル投与群は24%とあまり差がなかった。

 イベントフリー生存期間中央値は、ErbB2陽性の患者ではラパチニブ、パクリタキセル投与群が8.1カ月に対して、プラセボ、パクリタキセル投与群は5.0カ月だった。ErbB2が陰性だった患者ではラパチニブ、パクリタキセル投与群が5.4カ月に対して、プラセボ、パクリタキセル投与群が5.3カ月と差がなかった。

 またエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)の発現状態も合わせて調べ、解析したところ、ErbB2が陽性でER、PRが陰性の患者の方がErbB2、ER、PRのいずれも陽性の患者よりもラパチニブの併用によるイベントフリー生存率向上効果が高いことが明らかとなった。さらにErbB2が陰性でERが陽性の患者の場合、PRの発現状態によってイベントフリー生存率へのラパチニブの影響が異なる可能性も示された。