トラスツズマブとドセタキセルによる2剤併用と、トラスツズマブ、ドセタキセル、カルボプラチンの3剤併用を比較したBCIRG 007試験で、無増悪期間や生存期間などに有意な違いがないことが明らかになった。しかし研究グループの一人であるポーランドMaria Sklodowska Curie Memorial Cancer CentreのT. Pienkowski氏は、9月23日から27日にスペインバロセロナで開催された欧州癌学会(ECCO)で、投与されたドセタキセルの用量が異なることから、3剤併用におけるカルボプラチンの有用性を排除することはできないと話した。

 BCIRG(Breast Cancer International Research Group)007試験は、HER2陽性の転移性乳癌を対象に、トラスツズマブにドセタキセルおよびカルボプラチンを併用した場合の安全性と有効性を評価するためのフェーズIII臨床試験。HER2陽性転移性乳癌患者263人を、トラスツズマブ+ドセタキセル群(TH群)とトラスツズマブ+ドセタキセル+カルボプラチン群(TCH群)に無作為に割り付けた。

 TH群ではドセタキセルを100mg/m2、TCH群ではドセタキセル75mg/m2、カルボプラチンAUC6が投与された。これらの化学療法はいずれも3週間おきに、8サイクル継続した。その間、トラスツズマブは、初回は4mg/kgで、2回目からは2mg/kgが毎週投与された。化学療法終了後は、3週間おきにトラスツズマブ6mg/kgが投与された。

 試験の結果、主要評価項目である無増悪期間(TTP)の中央値は、TH群で11.07カ月、TCH群は10.35カ月 と有意差はなく(P=0.57)、副次評価項目である奏効率はそれぞれ72.5%と72.7%、奏効期間は10.7カ月と9.4カ月、臨床上の有用性(clinical benefit; CB)はともに67%であり、追跡期間39カ月(中央値)における生存期間はそれぞれ36.40カ月と36.57カ月だった(P=0.65)。

 このため研究グループは、HER2陽性の転移性乳癌においてTHもTCHも有効な治療法であり、その効果は同等であると結論づけた。しかしトラスツズマブとパクリタキセル、カルボプラチンの3剤併用が、トラスツズマブとパクリタキセルの2剤併用よりも、高い有効性を示したとの報告もある。このためPienkowski氏は、BCIRG 007試験では「ドセタキセルの投与量が異なるため、TCH群におけるカルボプラチンの有用性を排除することはできない」と主張した。

 これらの結果に加え、今回の発表では、血清中HER2細胞外ドメイン(Serum HER2 Extracellular Domain; HER2-ECD)と臨床的評価項目との関連性を調べたサブ解析の結果も報告された。試験前のHER2-ECDは中央値で75.8ng/ml(123人)であり、15 ng/ml 以上の患者が全体では89%、TH群で86%(64人)、TCH群で92%(59人)を占めた。

 治療経過に伴うHER2-ECDの変化を調べたところ、化学療法3サイクル目の終了時にはおよそ10ng/mlまで大きく減少したが、その後、一部の患者ではHER2-ECD値が増加し始め、HER2-ECD値が15%増加した患者の83%で腫瘍の成長が確認された。一方、試験前HER2-ECD値とTTPとの関連性は見られず、効果予測因子としての可能性は明確にならなかった。