国立がん研究センターの研究開発費に基づく研究班「わが国におけるがん登録の整備に関する研究(班長:東尚弘氏)は、がん医療の中核的医療機関で組織する「全国がん(成人病)センター協議会」(会長:堀田知光氏、以下「全がん協」)の協力を得て、加盟施設における“部位別10年相対生存率”を初めて集計し、公開した(http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/)。部位別の10年相対生存率は各がんの生物学的特性を反映しており、治療選択や患者への生活指導にも影響しそうだ。


 日本人のがんのイメージはかつて最も多くの死者を出していた胃がんを通して形成されてきた。がんは治療後、5年を経過して再発しなければ治癒したと見なす「5年生存率」重視の姿勢はその象徴といえるだろう。確かに、胃がんや大腸がんでは5年を経過すると再発、死亡する患者は稀になる。しかし、ある種のがんでは5年を経過しても、再発死亡する患者が出る。今回、全がん協のデータをもとに初めて集計、公表された「部位別10年相対生存率」を見ると、5年を過ぎても再発するかどうかはがんの部位によって大きく異なることが改めて明らかになった。臨床現場の実感がデータで裏付けられた格好だ。

「乳がんはいつまでも再発するがん」

 生存率にはがん患者で実測した「実測生存率」と「相対生存率」とがある。実測生存率の計算にはがん以外の死因による死亡も含むために、がん医療の質的評価などに用いる場合は、実測生存率を、対象者と同じ性・年齢・分布を持つ日本人の期待生存率で割った相対生存率を用いる。

 今回、研究班が発表した10年相対生存率は、1999年から2002年に診断、治療を行った16施設35,287症例について、全症例と手術症例について部位別に算出したもの。全部位全臨床期の10年相対生存率は58.2%だった(同じデータベースの5年相対生存率は63.1%)が、部位によって大きく異なっていた。例えば胃がんの10年生存率は69.0%(5年生存率:70.9%)、以下大腸がん69.8%(同:72.1%)、乳がん82.8%(同:88.7%)、肺がん33.2%(同:39.5%)、肝臓がん15.3%(同:32.2%)となっている(表)。

表●部位別、ステージ別の10年相対生存率と手術率

 10年生存率の違いに加え、5年生存率と10年生存率の違いにもそのがんの特徴が示されると同研究班は指摘する(図1〜6)。例えば胃がん、大腸がんなどの消化器がんでは5年を超えると生存率は大きく低下しない。つまり、巷間いわれているように5年を治癒の目安とすることができるがんだ。しかし乳がんでは5年を経過しても再発し、死亡する患者が多い。研究班の三上春夫氏(千葉県がんセンター・がん予防センター疫学研究部)は、乳がんを「いつまでも再発するがん」と呼ぶ。

図1●全部位の相対生存率

図2●胃がんの相対生存率

図3●大腸(結腸・直腸)がんの相対生存率

図4●乳がんの相対生存率

図5●肺がんの相対生存率

図6●肝臓がんの相対生存率