甲状腺機能障害への注意喚起

 免疫の増強に伴う副作用は多彩だ。間質性肺疾患や下痢などに加え、重症筋無力症、劇症化症例が報告された1型糖尿病、甲状腺機能障害、神経障害、肝機能障害などが要注意とされている。

 この日、3人目の演者となったのは同院病態制御内科学(第三内科)助教の蘆田健二氏。内分泌・代謝の専門家だ。同氏はニボルマブの副作用として注目される甲状腺機能障害と副腎皮質機能低下症について詳細に解説した。

 「甲状腺機能障害はコレステロールの変動を確認することが大切。甲状腺自己抗体では発症予測ができない。抗PD-1抗体投与例では、投与4週から24週までの間に、TSH値の変動を認める例が多い。またTSH値は甲状腺中毒症では低下するが、甲状腺機能低下症に移行するとTSH値が上昇する。一方で、投与6週から40週で続発性副腎皮質機能低下症が出現することがあり、好酸球増多、低Na血症、低血糖などが有用な指標になる」(表1参照)。

表1●ニボルマブ使用で想定される内分泌機能障害

保険審査との兼ね合いにも専門家の知恵

 使用開始前に必要な検査は何か。さらにフォローアップ中に必要な検査は何か、そのタイミングはどうすればよいか。非小細胞肺がんに先駆けて、ニボルマブの使用が開始された悪性黒色腫では3週間間隔の投与(化学療法既治病の場合、表3)となっているが、非小細胞肺がんでは2週間間隔での使用。フォローアップ検査のタイミングを考慮するにあたって、悪性黒色腫の経験を活かしつつもすべて踏襲することはできない。そこに呼吸器内科と皮膚科が同じテーブルで議論する意義が生まれるといえそうだ。

表2●ニボルマブとはこんな薬(1)効能・効果

表3●ニボルマブとはこんな薬(2)用法・用量

 異なる診療科の専門家同士が話し合う意義はそればかりではない。検査をめぐる議論の中で何回も登場するのが「この検査をその頻度で行って、保険審査で切られないかどうか」という点だ。免疫検査の保険審査の経験を膠原病の専門医が回答する、ウイルス検査については血液内科の専門家が経験を披露するなどのやり取りもあった。

 「1回目は大丈夫ですが、翌月に2回目を行えば、間違いなく切られます」

 「2カ月空けても副作用の発現を見逃す危険性はありますか」

 こうした保険審査の情報を共有することは、重要だ。チームiCIは設置目的の1つに「使用資材・院内副作用対策ガイドラインの統一化」を掲げている。

 院内スタッフの行動規範をしかも「具体性を高めた九大仕様」(中西氏)を作成する上で、保険審査の問題は回避することができないテーマといえそうだ。

 その後、委員会では、皮膚科からの症例紹介と続き、開始から1時間30分を経過した20時に、記念すべき第1回のチームiCIは終了した。

表4●ニボルマブとはこんな薬(3)非小細胞肺がんの国内臨床試験の副作用