2015年12月に肺がんにも抗PD-1抗体薬のニボルマブが承認された。免疫のブレーキを外してがんを治療するこの薬剤は、人間の恒常性を広く脅かすという側面を持つ。九州大学病院では呼吸器内科に内分泌、血液の専門家や薬剤師などの医療スタッフを交えたチームを組織、このほど第1回の会合を開いた。当日の議論から臨床現場におけるニボルマブの課題も見えてきた。


 九州大学病院外来棟5階の会議室。2月25日の午後6時を回ると、医師や薬剤師らが三々五々、集まり始めた。この日、ニボルマブの適正使用をテーマに組織された「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」(通称:チームiCI)の第1回が開かれることになっている。最終的に約50名の職員が会議室にやってきた。

 チームiCI(iCI:immuno checkpoint inhibitorの略)結成の旗振り役となった同院副院長で大学院呼吸器分野教授の中西洋一氏(九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設教授)がまず、「ニボルマブに関しては病院全体で正しい理解を促進する必要があり、副作用対策を通じ診療科横断的な連携強化に努めたい」と挨拶、協議が始まった。

 傍聴を許され、会場に同席した記者には予想外だったが、記念すべき最初の議題は「医療費について」だった。

九大病院で始まった“チームiCI”(免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会)。

患者の経済的な負担を回避

 説明を始めたのは同院患者サービス課の女性スタッフ。この課は、外来・入院患者さんやセカンドオピニオンの受け付けのほか、院内諸料金規程の整備、社会福祉・公費医療相談、診療報酬の算定・請求・収納に関する業務を担当する部門。高額な薬価で知られるニボルマブの処方にあたっては患者に対する経済的な負担の説明が望まれる。

 説明で特に力を入れられたのが、高額療養費制度と限度額適用認定証の話。同じ月に高額な医療費を支払った場合、一定の自己負担限度額を超えた分が後日払い戻されるのが高額療養費制度。患者サービス課のスタッフは自己負担額の計算法を丁寧に説明。さらに1カ月の薬剤費が月300万円にもなるニボルマブの場合、70歳未満(一般)の場合、具体的な試算をしながら患者負担の状況を示す。

 しかし、払い戻されるまでに数カ月かかり、限られた期間ながら患者や家族に経済的な負担を強いる。そこで窓口での支払いが自己負担限度額までになる限度額適用認定証を保険者に申請する方法があることを説明した。ここで議長の中西氏が「高価な薬剤であり、我々医療側が限度額適用認定証という制度があることを簡単に説明できることは大事」と合いの手を入れる。

 議論はこうした説明を誰がどのタイミングで患者に対して行うかに移る。外来化学療法センターの看護師などが、治療が始まるオリエンテーションのときに説明すること、制度についてはポスターを院内掲示して患者にも訴求すること、さらに適宜、患者サービス課の応援を受けることなどが申し合わされた。