写真◎柚木裕司

  ●コメンタリー●  
「永続的な仕組みの追求が必要」
 山本信之氏
(静岡県立静岡がんセンター・副院長、呼吸器内科部長、治験管理室長)

 肺がんの個別化医療に詳しく、LC−SCRUM−Japan/LURET studyに参加する静岡がんセンターの山本氏に、LC−SCRUMの意義と将来に向けた課題を聞いた。
 最近の肺がん化学療法はドライバー変異があるがんの場合はその変異による遺伝子の機能異常を抑制する分子標的治療薬が必要となります。現在のところ、非小細胞肺がん(NSCLC)の診療では上皮成長因子受容体(EGFR)とALK融合遺伝子を標的とする薬剤が使用されています。その他のがんでは従来の殺細胞性抗がん剤に分子標的治療薬を併用する治療が行われていますが、臨床家は双方に精通していることが求められることになります。
 遺伝子変異の有無によって奏効率が著しく変わるタイプの分子標的治療薬については、治験と並行して標的遺伝子変異を診断するコンパニオン診断薬の開発が必須となっています。現在のところ、NSCLCでは、EGFR変異とALK融合遺伝子を標的とした薬剤しかなく、日常診療の中で検査することが可能ですが、将来このようなタイプの薬剤が10個、20個と増えてくると現在の方法では対応できなくなります。患者さんが医療機関を訪れ、がんであることが確定した時点で、予め遺伝子変異をスクリーニングすることが必要です。LC−SCRUM−Japanは治験対象患者を探すための試みですが、いずれこのような仕組みが日常診療に導入されることになりますから、この試みは大変重要です。
 現在は研究が目的ですので、医師やスタッフのモチベーションは高く、積極的に献身的に協力しますが、日常診療に導入された後は、保険収載などの手立てを講じていく必要があるでしょう。米国では2〜3年前から、国内16の医療機関が集まってNSCLCの遺伝子変異を調べ、標的に合った分子標的治療薬を投与するLung Cancer Mutation Cosortium(LCMC)という組織が発足しています。これも時限的な組織で、永続的なものではありません。世界で最も先行する米国ですら、ドライバーがん遺伝子変異をスクリーニングする恒常的な組織を持っていないことになり、世界が取り組むべき課題ですが、まだ試行錯誤が続いている段階であるといえるでしょう。 
 各施設から提供された患者試料をバンキングして、患者の同意が得られていない研究への利用を許すかどうかは、なお議論が分かれるところではないかと思います。静岡がんセンターは、この個人情報保護をとりわけ厳密に考えており、LC−SCRUM−Japanには参加しますが、バンキングは許容しない方針です。昨年11月から胸部グループでは、日常診療の中で患者の遺伝子変異約30個を調べています。院内ではこうした試料のバンキングは行っていますが、院外に出すには厳密にルールを、ローカルルールですが定めています(「個人情報保護の方針」を参照)。この方針については、院内でもいろいろ意見があり、将来は見直すこともあり得ますが、現在はバンキングを認めないというのが、静岡がんセンターの方針です。 (談)