乳房インプラントが保険収載へ
 乳房再建術には最近、大きなトピックスがある。昨年9月に薬事承認された乳房インプラント(シリコンゲル充填人工乳房)が乳房再建の用途に限って、今年4月から保険適用されることが決まったことだ。

 現在の乳房再建には、腹部の脂肪組織を乳房に移植する自家組織移植が普及している。しかし、形成外科医であっても難しい手術で連度の高い医師が不足している。「インプラントは自家組織移植した場合に比べ、痛みを訴える患者がいるなどの課題はあるが、自家組織手術を補完する手技になる」と大慈弥氏はいう。

 これまでは、乳房再建を希望する患者の多くが美容外科の扉を叩き、100〜150万円などの金額を自己負担し、再建手術を行ってきた。しかし、4月以降は保険が利くことになり、10〜20万円の負担で、再建術を受けることができるようになる。ただし、どこでもインプラント手術ができるわけではなく、厚生労働省は承認条件として「インプラントを使用する医師や施設に関する基準を示すガイドラインの作成」を関連学会に求めている。過去の製品で、移植したシリコンバッグが破裂して、成分が全身に散り、重篤な自己免疫疾患を発症する事故が起こったことがあるためだ。同省は、こうした事態が再び起こることを警戒している。

写真3 設立記念総会のポスター。9月19日から20日まで、グランド・ハイアット・福岡を会場に開催される。

 ここでいう関連学会とは、これまでは日本形成外科学会と日本乳癌学会ということになるが、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が発足した後は、ここが中心になってガイドラインの作成を進めることになると大慈弥氏は説明する。

新学会の武器はガイドライン
 実際、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の設立にあたっては、日本形成外科学会と日本乳癌学会から同数の理事を選任するよう配慮されている。第1回大会の会長へ形成外科医の大慈弥氏が選ばれているが、理事長は日本乳癌学会の理事長を経験した園尾博司氏が就任、大会の副会長には前述の通り、乳腺外科医の中村氏が就任するなど、バランスを考慮した人事配置となった。

 手術前に乳腺外科医と形成外科医が切除方法や範囲について協議する―。こんな光景が見られる日が来るのか。「そうなる必要がある」と乳腺外科の立場から中村氏は指摘する。

 乳房再建技術が乳がん手術の標準的な手技として確立するようになれば、患者らが静観するとは考えにくい。患者の関心が高まれば、乳がん手術を行う前の説明に、再建という選択肢について患者に説明する義務が生まれる。そうした状況1つ想像しても、乳房再建を得意とする形成外科医のフォローが必要となることは疑いようがない。

 また、保険収載と引き換えにガイドラインの作成を学会が受けたことの意味は大きい。同学会のガイドライン作成委員会は既に基本案の検討に着手しており、保険によるインプラント使用の条件を定めている(表参照)。こうしたガイドラインの規定に合わない施設は、実績があっても保険によるインプラント手術を行うことができないという事態も想定される。

 手術の後始末から、手術方針の決定にも介入する。前面に出てくる形成外科医の姿は、乳がんの外科手術が新しい時代を迎えつつある象徴なのかも知れない。

表●日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会のガイドライン要旨
  • 乳房再建を目的とした乳房インプラントに関する使用要件基準
  • 乳房インプラントの適応基準
  • 実施医師基準
    学会専門認定医で日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が主催する講習会を受講すること
  • 実施施設基準
  • 症例登録と報告の義務
(日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会ガイドライン作成委員会による)