マンモグラフィ検診の普及に伴い、早期発見される乳がんが増えている。一方で、「過剰診断になる」、「BRCA1/2遺伝子変異を持つ女性では発がんリスクを高める」などの報告が相次ぎ、乳がん診療におけるマンモグラフィの位置づけが揺れている。マンモグラフィ検診を呼びかけたピンクリボン運動を精力的に進め、日本乳癌検診学会の理事長も経験した福田氏は、マンモグラフィ検診に限界があることを認めつつも新しいモダリティーを評価するための仕組みの大切さを説く。 (聞き手:小崎丈太郎=本誌編集長)



福田 護(ふくだ・まもる)氏
1969年金沢大学医学部卒業。71年より国立がんセンター(現国立がん研究センター中央病院)レジデント。74年に聖マリアンナ医科大学第1外科助手。75年より米国Memorial Sloan−Kettering Cancer Center外科レジデント。Virginia大学外科リサーチインストラクターを経て、78年に聖マリアンナ医科大学に復帰。99年に同大学病院外科学(乳腺・内分泌外科)教授。2009年ブレスト&イメージング先端医療センターの立ち上げにより、院長に就任。
(写真◎清水真帆呂(東京フォト工芸))

―マンモグラフィによる乳がん検診の受診を呼びかけるピンクリボン運動は2000年に始まりました。今年が13年目ということになります。成果をどう考えていますか。

福田 認知度は大幅に上昇しました。私は認定NPO法人乳房健康研究会の活動に携わっていますが、そこが40〜60歳代の女性を対象に行ったアンケート調査の結果を見るとよく分かります。03年にはマンモグラフィを知っているという方は50.2%でした。11年には95.5%になり、調査を受けた人のほとんどが、「知っている」と回答しています。ピンクリボン運動自体の認知率も85.8%に達していました。問題は受診率ですが、認知度ほどに上昇しているとは言えません。11年の受診率も38.9%に留まっています。残念ながら、運動の認知度と受診率にはギャップが存在します。

 このギャップの改善のため、地域を決めて密度の高い運動を行ったらどうかと考えて、東京都の墨田区で、保健衛生協力員を通じて受診を勧める、回覧板による乳がん検診無料クーポン券の宣伝、墨田ピンクリボンマップの作成やピンクリボンウオークを実施しました。その結果、受診率が前年比150%となり、活動のエリアを絞ることで短期的に大きな成果が得られることが分かりました。

―エリアを絞ると受診率向上に結びつきやすい理由は何でしょう。

福田 回覧板が意外といいみたいです。隣の家に回す時に、否が応でも目を通しますよね。自治体の広報で呼びかけても、読まないことが多いようですが、回覧板となるとそうはいかない。

―意外とアナログメディアが奏功したんですね。

福田 そうなんです。ほかの地域でも同様の検討をします。

―ところで、そのマンモグラフィによる検診ですが、欧米を中心に無用論や有害論が出ているようです。昨年話題になりましたが、米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、「真の利益から見た年齢別マンモグラフィ検診の推奨度」として、40〜49歳に対する検診をそれまでの「2年毎の検診を推奨する」グレード:Bから「定期検診を推奨しない、各自の事情や考えで行う」とするグレード:Cへと格下げを行いました。別の角度からの話題ですが、英国医学雑誌(BMJ)2012;345:e5660Page1−15では、BRCA1/2遺伝子変異陽性の30歳未満の女性における画像診断による放射線被曝によって、乳がんの発症リスクが高まるという報告が掲載されました。この発症リスクの増加は、乳がんの早期発見のベネフィットを上回るそうです。ピンクリボン運動に献身してきた医師として、どのような感想をお持ちですか。

福田 それを考えるためには、乳がん診療の変遷全体を含めて考える必要があります。