しかし、2011年に米FDAが乳がんにおける認可を取り消すなど、ベバシズマブの評価が揺れている。そもそも、栄養血管の新生阻害効果で抗腫瘍効果を発揮するベバシズマブを微小残存がん退治が主目的である術後補助療法に動員すること自体を疑問視する声もある。同試験に日本から参加した京都大学大学院医学研究科乳腺外科学教授の戸井雅和氏は、「ベバシズマブをどのように使用すべきか、乳がんの分野ではまだ学習の途上にあり、薬剤の潜在能力を最大限に活かす使用法を探っていく必要がある。婦人科腫瘍では良好な成績が出ていると聞いているので、それらのがんの専門家とも協調して探って行くべき」と語っている。

 浸潤性小葉がんにはレトロゾールを、優先的に使うべきか 

 米国Dana−Farber Cancer InstituteのOtto Metzer Filho氏らのグループが、術後補助療法にアロマータゼ阻害薬(AI)のレトロゾールを使用した場合、浸潤性乳管がんよりも浸潤性小葉がん(lobular carcinoma)でより大きく生存期間を改善する効果があり、さらにintrinsic subtypeのluminalBタイプの方がluminal Aタイプを上回る効果が期待できることを報告した。この研究は、BIG1−98試験のサブセット解析として行われた。

 BIG1−98試験(N Engl J Med.2005;353(26):2747−57)は、閉経後ホルモン感受性乳がん患者8,010名を対象に、術後補助療法におけるレトロゾールとタモキシフェンとの有効性を比較した国際的無作為化二重盲検第III相試験。レトロゾール単剤5年、タモキシフェン単剤5年、レトロゾール2年→タモキシフェン3年、タモキシフェン2年→レトロゾール3年の4群を比較した。単剤では、レトロゾールが無病生存期間(DFS)と遠隔転移で有意に有効という結果であった(観察期間中央値25.8カ月)。

 乳房は腺葉と呼ばれる単位から成り立っているが、それぞれの腺葉は乳管と小葉から構成されている。授乳期には小葉でミルクが作られ、乳管を通って、乳頭からミルクが分泌される。今回の解析は、レトロゾール、タモキシフェンの単独投与を受け、さらに組織型、ホルモン感受性が明らかな2,923名について、乳管がんと小葉がん、さらにluminal AとBとに分けてDFSと全生存期間(OS)を解析した。

 乳管がんでは5年DFS率は、レトロゾール群が88%、タモキシフェン群が84%、8年DFS率はレトロゾール群が82%、タモキシフェン群は75%。タモキシフェン群に対するレトロゾール群のハザード比は0.80(95%CI[0.68−0.94])だった。一方の小葉がんは乳管がんを上回る成績が出た。レトロゾール群の5年DFS率は89%、タモキシフェン群は75%、8年DFS率はレトロゾール群が82%、タモキシフェン群が66%で、HRは0.48(同:0.31−0.74)であった。この結果、乳管がんに比べ、小葉がんのDFSは有意に高かった(p=0.03)。

毎年12月に開かれるサンアントニオ乳がんシンポジウムは「乳がんの勉強がじっくりできる」と日本の専門家のリピーターも多い。

 OSについては、乳管がんではレトロゾール群の5年生存率は94%、タモキシフェン群は92%、8年生存率はレトロゾール群が88%、タモキシフェン群が84%で、タモキシフェン群に対するレトロゾール群のHRは0.73(95%CI[0.6−0.89])だった。小葉がんではレトロゾール群の5年生存率は96%、タモキシフェン群は86%。8年生存率はレトロゾール群が89%、タモキシフェン群が74%で、HRは0.40(95%CI [0.23−0.69])であり、乳管がんに比べ、小葉がんのOSは有意に高かった(p=0.045)。

 また、intrinsic subtypeによる解析では、どちらもluminal Bが有効性が高かったが、その差は小葉がんでより大きくなる傾向が認められた。

進行・転移・再発乳がん

 乳房内再発でも化学療法は有用、CALOR試験で明らかに 

 乳房内再発の標準的治療は手術と放射線治療だ。しかし、スイスLuzerner Kntonsspital(Lunzen)の腫瘍内科部門長のStefan Aebi氏ら、多国籍の臨床研究グループCALOR(Chemotherapy as Adjuvant for Locally Recurrent Breast Cancer)が、5年間を中央値として追跡した臨床試験で、こうした患者にも術後補助化学療法が必要と結論している。

 このCALOR試験は、乳房切除術もしくは温存術を施行され、乳房内に局所再発した162名を対象に実施された。ホルモン受容体のstatus、再発部位、以前に行われた化学療法の種類によって階層化されてはいるが、放射線療法、内分泌療法、抗HER2療法の選択は、各主治医に一任された。選択される化学療法も患者の前治療を考慮して自由に決めることが認められた。緩いプロトコールともいえるが、Aebi氏はこうしたプロトコールを実用的と表現している。

スイスLuzerner Kntonsspital(Lunzen)の腫瘍内科部門長のStefan Aebi氏。

 その結果、5年DFS(無病生存割合)は化学療法群では69%、非化学療法群では57%と有意な差がついた(p=0.0455)。5年OS(全生存割合)は、化学療法群の88%に対して、非化学療法群は76%でやはり統計学的に有意な差が示された(p=0.02)。

 この結果を踏まえて、Aebi氏は「乳房内の局所再発についても補助的な化学療法は実施すべきであることが明らかになった。化学療法の選択は内分泌療法の選択肢も考慮して決定されるべき。内分泌療法の選択肢がないホルモン受容体陰性の患者では、迷うことなく化学療法を選択すべきであることが証明された。ホルモン受容体陰性の患者への対応については、さらに長期のフォローアップデータが必要」と語っている。