毎年恒例の乳がん国際シンポジウム、CTRC−AACR San Antonio Breast Cancer Symposiumが2012年12月4〜8日に米国テキサス州San Antonioで開催された。実臨床に還元できる重要なエビデンスが得られる一方で、多くの課題も残された。


原発性乳がん

タモキシフェンは5年よりも、10年服用すべき 

 術後補助化学療法にタモキシフェンを服用する期間を、5年間とするか10年継続すべきかを問う臨床研究がATLASグループから報告された。15年間、観察を続けた同グループのChristina Davis氏とRichard Gray氏(英Oxford大学)によると、10年継続する方が、再発リスクも低く、死亡率も低下したという。

 方法は、5年間服用を続けた患者グループを対象に無作為割付し、5年で服用を止める群と向こう5年間、服用を続ける群とに分けて、再発リスクと死亡率を比較するというもの。15年経過時点の再発率は、5年群の25.1%に対して10年群は21.4%と有意に低く、同様の死亡率は、5年群が15.0%、10年群が12.2%と有意に減少させた。タモキシフェンを10年間服用した場合、最初の10年間で死亡率は3分の1になり、次の10年間でも半減させることができる計算だという。

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)会長のMartine J.Piccart氏。

 トラスツズマブの術後化学療法は1年で十分 

 乳がんの術後補助療法におけるトラスツズマブの潜在力を最大限に発揮させる投与期間は1年間か2年間か―。長年、続いてきた議論にHERA試験が8年間のフォローアップ期間を経て、このほど答を出した。正解は1年間。1年間投与すれば2年間投与した場合と同じ無病生存期間(DFS)が確保できることが明らかになった。欧州臨床腫瘍学会(ESMO)会長のMartine J.Piccart氏が発表した。

 HERA試験は、2001年〜05年にわたって世界から5,102名の患者を登録して行われた大規模臨床試験で、日本からも患者登録が行われた。患者は、手術、術後補助化学療法、放射線療法を経た後、HER2抗原陽性であることが確認された後にランダム化され、経過観察群(1,698名、後に希望に応じてトラスツズマブを使用)、1年間トラスツズマブを使用する群(1,703名)と2年間使用群(1,701名)に分けられた。8年を経過した時点の1年間群のDFS率は76.0%、2年間群は75.8%。HR(2年vs1年)=0.99(95%CI[0.85−1.14]、p=0.86)で、まったくの同等だった。差がついたのはprimaryとsecondaryとを合わせた心毒性の発現率。2年間群は1年間群の2倍の心毒性を発現していることが明らかになった。

 トリプルネガティブ乳がんの術後補助療法に、ベバシズマブは無効 

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術後補助療法における抗血管新生阻害薬のベバシズマブの有効性を検証する大規模第III相試験BEATRICE(BEvacizumab Adjuvant therapy in Triple−negative breast Cancer)の結果が、英Edinburgh大学腫瘍学教授のDavid Cameron氏により報告された。TNBCは薬物療法が化学療法に限られ、予後も悪いことから、ベバシズマブに期待が集まっていたが、対照となった標準化学療法にinvasive DFSで上回ることができなかった。

英Edinburgh大学腫瘍学教授のDavid Cameron氏。

 BEATRICE試験の登録患者は世界各国から2,591名。2群に分け、対照群(1,290名、CT群)ではタキサン、アンスラサイクリン、両者の併用などの標準的化学療法が実施された。一方、試験群(1,301名、BEV+CT群)ではこれら化学療法にベバシズマブを併用、さらに化学療法が終了した後は、ベバシズマブ単独療法が投与期間の合計が1年になるまで続けられた。

 3年DFSでは、CTの82.7%(95%CI[80.5−85.0])に対してBEV+CT群は、83.7%(95%CI[81.4−86.0])。HR=0.87(95%CI[0.72−1.07]、p=0.1810)。59%のイベントを確認した時点で行われた中間解析では全生存期間(OS)も、死亡率のHR=0.84(95%CI[0.64−1.12]、p=0.2318)で、IDFS、OSのいずれでもベバシズマブ使用の有効性を検証できなかった。

 Grade3以上の有害事象については、BEV+ CT群の高血圧の頻度の上昇が認められた。化学療法併用の期間では、CT群の高血圧発症率が1%未満であったのに対して、BEV+CT群では7%に上昇。ベバシズマブ単独使用期間ではCT群が1%未満に対して、BEV+CT群では5%だった。ベバシズマブ単独使用期間に限っての話だが、蛋白尿がCT群のゼロに対して、BEV+CT群では24名(2%)に認められた。慢性心不全(CHF/LVD)もBEV+CT群で有意に高く発症することが認められた。

 OSについての最終的な評価は、340名が死亡した時点、もしくは5年を目途に実施される予定だ(2013年後半になると予想されている)。この試験の結果を基にベバシズマブの効果予測マーカーの探索も続行中だという。こうした効果予測マーカーが見出されれば、適切な患者選択によって、ベバシズマブの有効性が再評価される可能性はある。