トピックス3  薬の情報はがんリハビリに有用、薬剤師の積極的関与で成果  

 城東社会保険病院(東京都江東区)では、がん患者のリハビリテーションに薬剤師が参加し、成果を上げている。薬剤師が参加することで、抗がん剤の副作用や、リハビリテーション前のオピオイド薬のレスキューの選択やそのタイミングなどの情報提供ができるようになったと、同院薬剤師の高橋さおり氏が発表した。

 2010年の診療報酬改定で「がん患者リハビリテーション料」が算定できるようになるなど、がん患者に対するリハビリテーションに関心が高まっている。同院は2011年に算定施設となり、当初は医師、理学療法士、作業療法士、看護師で構成されたチームで、定期的にカンファレンスなどを開催していたが、その後医療相談員、薬剤師が加わった。

 薬剤の有害事象の中には悪心など、動作によって影響を受けるものがある。現場の理学療法士や作業療法士らと情報を共有することで、薬剤の特性を踏まえたリハビリテーションを行うことが可能になったという。「患者の情報を共有し、各職種の専門知識を出し合うことによって、職種間のコミュニケーションもより円滑に進むようになった。薬剤師は薬剤を切り札にしがちだが、各職種と連携することによって効果的な薬物療法が提案できる」と同氏は結論している。

  会長講演  
「多死社会目前の医療変革期、薬剤師はもっと行動を」
 第6回日本緩和医療薬学会年会・会長
 平井みどり氏(神戸大学医学部附属病院薬剤部長・教授)

 「薬剤師は患者に触れてはいけないという“都市伝説”の呪縛から解放されて、病棟や在宅医療の現場で薬剤師が直接、患者ケアに関わる例が増えてきた。これは大変、喜ばしい」と会長の平井氏は、会長講演において緩和医療をめぐる状況を薬剤師の視点から展望した。

 医療の中で、薬剤師は常に自らの職責の再確認を強いられてきた。どこまでが薬剤師の仕事か、どこまで関っていいのか。その問いかけの結果、最近強調されるようになってきたことが、薬剤師も患者のバイタルを取り、患者の状態を把握すべきだということだ。薬剤師の仕事の中には、処方された医薬が、その目的通りの効果を上げているかどうかを検証する業務も含まれている。「検査値などのデータだけで、薬効を評価することには限界がある。フィジカルアセスメントを行って、処方された医薬の効果を把握することも薬剤師の仕事」と平井氏は指摘する。ともすれば、調剤室にこもり、患者との接触がなかった薬剤師の中には、そうした業務に不慣れという人も少なくない。その対策として、平井氏はアロママッサージの効用を説いた。「アロママッサージは患者と薬剤師の立派なコミュニケーションツールになる」と紹介した。

 また、これまで医療現場で繰り返し重要性が強調されてきた患者の生存の質(QOL)の維持に加え、死の質(Quality of Death:QOD)の確保が医療の重要なテーマになると同氏は展望する。「高齢化社会の到来と同時に、多くの死者が出る“多死社会”が到来しようとしている。多死社会への準備として終末期医療の在宅医療へのシフトが志向されている。しかし、明らかに現在のインフラでは不十分。QODを臨床の豊かさの指標と捉えることが重要。そうした指標の構築が望まれている」。

 医療が大きな変革期を迎えているときに薬剤師は何をするべきか。平井氏はそこに明確に答える。「1人で考えていても何もできない。新しいネットワークを作って形にすること。日本緩和医療薬学会年会は、単純に勉強する場だけではなく、そうしたネットワーク構築の第1歩としてほしい」。