トピックス2  増える麻薬持参の転院患者、浮上する廃棄の問題  

転院に伴う持込麻薬の問題を提起した越川病院の中村文香氏(向かって右)と宮崎信子氏。

 疼痛緩和目的で麻薬を使用しているがん患者が転院する場合、未使用の麻薬を持参するケースが多い。必然的に終末期患者の受け入れが多い病院では、内服中止や患者の死去などによって残る麻薬の処理に現場は苦慮している。8割が緩和ケアの患者という越川病院(院長:越川貴史氏、東京都杉並区、34床)の薬局長の宮崎信子氏と同薬剤師の中村文香氏らは、持参麻薬の利用率や廃棄に至る原因をまとめ、ポスター発表を行った。同グループは、「廃棄処理には時間もかかるし、多量麻薬処理による薬剤師への身体的な影響も懸念される。転院する場合にはお互いに病病連携や病診連携を深め、不必要になる麻薬を減らす努力が必要」と訴えている。

 麻薬の廃棄は「麻薬及び向精神薬取締法」によって規制されており、麻薬の品名、数量や廃棄の方法を都道府県知事に届け、麻薬取締員などの立会のもとに行うことが求められる。一方で、がん患者が使いきらないうちに新たな麻薬を処方されたり、転院した病院で新たに麻薬が出されることがある。こうして持ち込まれた麻薬の廃棄が転院先の医療機関の薬剤部の負担になっている。

 中村氏らの発表によると、2010年10月から2011年9月までの1年間でがんを理由に入院した患者約350名のうち、約90%が麻薬を使用、さらに麻薬を持参して入院する患者の割合は76%に達した。その持参された麻薬の平成23年度の使用率を調べると、全く使用されない割合が4.3%、さらに使用率が10%未満だった例が8.6%となった。これら廃棄された麻薬の金額を薬価ベースで計算すると1,031,527円になった。

 同病院で院内処方された麻薬が廃棄される割合はわずか0.5%。その理由は同院が、処方日を少なくする、継続が中止になった場合はすぐに薬局に返還し、事務処理の後、再利用麻薬として扱うなど工夫しているためだ。廃棄される殆どは、持込麻薬ということになる。

図● 持参麻薬の利用率
廃棄の理由は、「疼痛コントロールが良好ではなく、ローテーションやタイとレーションをせざるを得なかった」、「転院直後に内服が中止になった」、「患者が亡くなった」、「廃棄のために他院が処方した麻薬を預かった」など。

 こうした持込麻薬の廃棄を減らすために、中村氏らは、(1)患者症状に合わせた麻薬処方の徹底、(2)なるべく長期処方を避ける、(3)転院の際は事前に転院元と転院先の医療機関で麻薬処方に関する打ち合わせを励行するなどの対策を提案している。

 欧米先進国に比べ麻薬使用量の少なさが指摘され続けてきた日本では今後、医療麻薬の消費の増大が予想される。宮崎氏は、「今後麻薬使用を推進していく上では、今以上の適正使用を医師や薬剤師が連携して求めていくべき」と語っている。