トピックス1  25年ぶりの新オピオイド剤、メサドンに集まる期待と課題  

特別対談で警鐘が鳴らされたメサドン。加賀谷肇氏(左)と恒藤暁氏(右)が語り合った。

 「天使の薬か悪魔の薬か」(大阪大学大学院医学研究科緩和医療学教授・恒藤暁氏)。

 年会でこのようなきわどい表現で語られた新薬が、メサドン(商品名:「メサペイン」、発売元:帝国製薬)だ。メサドンは9月末に承認されたオピオイドで、効能効果は「他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛、中等度から高度の疼痛を伴う各種がん」。

 このメサドンは薬価収載の前から、緩和医療の関係者の間で注目されている薬剤で、冒頭の発言は、恒藤氏と明治薬科大学臨床薬剤学教室教授の加賀谷肇氏が行った特別企画「特別対談 緩和医療の将来」の中で、飛び出した。

 メサドンはNMDA受容体拮抗作用があり、欧米では神経障害性疼痛などのモルヒネなどが効きにくい痛みに使われている。既存のオピオイド鎮痛剤で取れない疼痛に有効性が認められたことはメサドンが天使の薬であることを示す。一方で悪魔の薬と表現した理由を恒藤氏は、半減期が5〜130時間に及び、投与量の調整が困難である。相互作用を生じる薬剤が多く、管理を怠れば致死的な呼吸抑制、QT延長症候群など不整脈などの副作用が出ることなどを挙げ、「使用にあたっては、しっかりとした管理体制が不可欠」と語った。

 一方の加賀谷氏は、メサドンに対する留意事項として、他の強オピオイド鎮痛剤との交差耐性が不完全で、切り替え時に過剰投与になる可能性があり、薬物動態にも個人差が大きくその結果、他の強オピオイド鎮痛剤との等鎮痛比が確立していない点に注意を喚起した。

 厚生労働省の承認条件には、メサドンのリスクに精通した医師が処方し、薬局において調剤する場合は薬剤師は当該する医師・医療機関を確認した上で調剤することを求めている(別掲)。加賀谷氏は、「処方できる医師の条件としてメサドンに関するeラーニングによる学習が必要とされている。調剤業務を行う薬剤師にも十分な知識があることを確認することが必要になるのではないか。今後、厚生労働省と協議したい」と語る。

 あえて、特別対談でメサドンについて警鐘を鳴らした理由について、加賀谷氏は、「メサドンの使用に当たっては医師だけではなく、薬剤師がしっかりしていないと危ない。関係する薬剤師が集う場で、注意を喚起しておきたかった」と語った。

 国立がん研究センター中央病院では、緩和医療科と薬剤部が協力して、メサドンを安全に使用できるように薬剤師が処方監査や処方の支援に必要な情報を取りまとめており、近く公表する予定だ。

 新薬メサドンをどのように使いこなすか。がん診療では、医師と薬剤師の連携の重要性が指摘されてきた。日本のがん医療にはたしてこの連携が確立しているのか。メサドンはその試金石になったということもできそうだ。

メサドンの〈承認条件〉(抜粋)
1.がん性疼痛の治療に精通した医師によってのみ処方・使用されるとともに、本剤のリスク等についても十分に管理・説明できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いられ、それら薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。