鎮痛補助薬の定義として、日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010年版」によると「主たる薬理作用には鎮痛作用を有しないが、鎮痛薬と併用することにより鎮痛効果を高め、特定の状況下で鎮痛効果を示す薬物」であり、鎮痛以外の適応でありながら、いくつかの疼痛状態において鎮痛効果を持つ薬剤を示し、基本的にはオピオイドでのコントロールを試みた上での併用が推奨されていることを紹介。

 欧州腫瘍学会(ESMO)ガイドラインや米国のNCCNガイドライン成人がん疼痛では、神経障害性疼痛には三環系抗うつ薬または抗痙攣薬を副作用に注意しながら投与することを推奨し、欧州緩和ケア協会(EAPC)ガイドラインではオピオイドの反応が限定される神経障害性疼痛には、三環系アミトリプチリン(商品名「トリプタノール」他)とガバペンチン(同「ガバペン」他)を強く推奨していることを示した上で、「しかし、臨床的には三環系抗うつ薬は口渇やせん妄の副作用があり、高齢者やせん妄リスク患者に用いるのは難しい。実際の臨床ではセロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)の方が投与しやすく、非線形型のガバペンチンより、線形型でかつ末梢神経障害に保険適応があるプレガバリン(同「リリカ」)がより選択される傾向にある」と話した。

 有賀氏は、神経伝導系の抑制と刺激抑制系の不活化によって疼痛は制御されるが、これらの薬剤はそれぞれの経路で作用する受容体が異なる。その一方で、疼痛の伝導も複雑であることから効果予測が難しいことに言及。「相互作用や副作用を鑑み、患者個々に合わせて鎮痛補助薬を選択することが大切」と述べた。

がん患者の半数以上が疼痛に悩む
 順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座の榎本達也氏は「新規抗うつ薬の今後の可能性 臨床と基礎の見地から」と題して話した。榎本氏は、海外文献によるとがん患者のうち神経障害性疼痛だけを有する患者は19%に過ぎず、神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛が混在した疼痛を認める患者は39%おり、「がん患者の半数近くが神経障害性疼痛に苦しめられていることが示されており、その治療が重要」と話した。

 様々な抗うつ薬が神経障害性疼痛の治療に取り入れられているが、三環系抗うつ薬は副作用が強く使用しづらい面があり、新規抗うつ薬が期待されていることを紹介。

 放射線治療とオキシコドンが投与されていた患者で、脊椎転移による腰背部痛のため歩行困難となった前立腺がんの症例では、デュロキセチン(同「サインバルタ」他)が有効だった症例や、肺がんで神経障害性疼痛と化学療法などの治療による嘔気がある患者に対して、ミルタザピン(同「レメロン」、「リフレックス」他)が有効だった症例を紹介。疼痛のみならず嘔気も改善し、中断していた化学療法を再スタートすることができたことを説明した。

 榎本氏は「がん患者の疼痛治療における鎮痛補助薬の使用には、病態を見極めて抗うつ薬を使い分けることでより良い緩和ケアができるのではないかと思われる。基礎研究と臨床がタイアップして抗うつ薬の可能性を見いだしていくとよいのではないか」と語った。

 富山大学大学院医学薬学研究部麻酔科学講座の竹村佳記氏は、「新規抗てんかん薬プレガバリンの鎮痛補助薬としての可能性」について話した。

 竹村氏は、神経障害性疼痛の第1選択薬に、現在は、抗うつ薬とともに抗てんかん薬であるプレガバリンが位置づけられており、臨床において中心的な役割を担っていることを話した。

 プレガバリンの他の鎮痛補助薬との差異として、(1)経口摂取後、線形の薬物動態を示すこと、(2)生体利用率が安定していること、(3)重篤な副作用や他剤との相互作用が少ないこと―などを挙げ、比較的使いやすい薬であると説明した。

基礎と臨床が一緒に研究を
 最後に登壇した星薬科大学薬理学教室の成田年氏は、「抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬の分子薬理学的プロファイリングと緩和医療への応用」について話した。

 成田氏は、神経障害性疼痛に対して有効性を示す抗精神病薬や抗うつ薬、抗てんかん薬などについて、例えばフェニトイン(同「アレビアチン」他)やカルバマゼピン(同「テグレトール」他)はナトリウムチャネル遮断作用、ガパペンチンやプレガバリンはカルシウムチャネル遮断作用、クロナゼパム(同「リボトリール」他)やバルプロ酸ナトリウム(同「デパケン」他)はGABA神経系賦活作用といった主な作用機序があるが、さらに細かく見ていくとそれぞれ多岐にわたる作用があり、その作用点を細かく見て、鎮痛補助薬の性格を見極めていくことが必要だと説いた。

 シンポジウムでは、「このような病態にはこの鎮痛補助薬を」という指針が示せない状況であることに対して、痛みは患者の病態や身体状態、精神状態や時間によっても左右され、非常に複雑であること、さらに鎮痛補助薬の機序も複雑で多様であることから、法則が見いだしにくいが、今後、基礎と臨床が一緒になって研究を進めていくべきだと締めくくられた。