高い腫瘍縮小効果からサルベージ手術
 セツキシマブの特徴は、腫瘍縮小効果が比較的多く見られる薬物だという点だ。再発転移頭頸部がんに対してCDDP+5−FU+セツキシマブとCDDP+5−FUとを比較したEXTREME試験では、全生存期間の改善はHR=0.80程度で、前述のようにぎりぎりの及第点というところであったが、既存の2剤併用療法に比べ、セツキシマブ併用した群で腫瘍の縮小効果(奏効率)が約2倍になった(図6)。

図6● EXTREME試験における腫瘍縮小効果

 この事実から、再発転移しても、セツキシマブを含む薬物療法レジメンを施行することによって、サルベージ手術を行える患者が増えるのではないかと期待される。局所進行では、放射線治療の力を借りたが、再発転移では外科の力を借りて、患者の生存期間の改善につなげることができるようになるかもしれない。

 BRTはまだ始まったばかり、課題も多い。stageIII/IVの術後の患者を対象にCRT群とCRT+セツキシマブ群とを比較した臨床試験(RTOG 0522)では、セツキシマブの上乗せ効果は否定された。また、日本では抗体医薬の使用経験が少ない頭頸部がんの専門家や放射線腫瘍医の心理的な壁をも乗り越える必要がある。

 最も重要な点は、頭頸部がんは多様な患者を擁し、多くの治療の選択肢を持っているという点だ。構音再生や障害を回避する生活指導、種々のリハビリや時に雇用確保の相談など対腫瘍療法以外の多くの要素が頭頸部がん診療を構成している。こうした複雑を極める医療に初めて分子標的治療薬が投入される。おそらく大腸がんとは大きく異なる軌跡を、セツキシマブは頭頸部がんで描くことになると予想される。