生存期間中央値を20カ月改善
 頭頸部がんは、EGFRがほぼ100%の細胞で過剰発現しており、しかもEGFRシグナル自体に放射線抵抗性増大効果があるとされていたことから、セツキシマブと放射線照射の同時使用には大きな期待がかかっていた。

 実際に承認の根拠となった臨床試験の1つが、関係者の間では発表者の名前を取った「Bonner試験」と呼ばれている第III相無作為化比較試験だ。局所進行頭頸部扁平上皮がん患者424例を放射線単独療法とセツキシマブと放射線療法とを併用したBRT群とに分けて検討したところ、BRT群に生存期間の上乗せが見られたというもの(HR=0.74[95%CI:0.57−0.97],p=0.03)(図3)。しかもセツキシマブ併用によって放射線の副作用は増強されなかった。

図3● 局所進行がんを対象としたBonner試験(PIII)
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 日本国内では、承認取得を目的に「053試験」が実施された。22例と少ない症例を対象としたものだが、完遂率を主要評価項目に行われたこの試験では、すべてが完遂するという上首尾の結果を挙げた。

 再発転移がんについてはどうか。これにはやはり、関係者の間で著名な第III相試験のEXTREME試験がある。こちらは、放射線療法との併用ではなく、標準的化学療法であるプラチナ系薬剤と5−FUにセツキシマブを併用したもの。シスプラチンなどのプラチナ系薬剤+5−FU に対してセツキシマブ併用による上乗せ効果が確認された(図4)。さらに、セツキシマブを併用することで、疼痛、嚥下、摂食、言語の障害も確認された。生存期間と機能温存という頭頸部がん治療が模索する2つの目的が達成されたことになる。

図4● 再発転移がんを対象にしたEXTREME試験(PIII)
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 一方で、全生存期間の改善がHR=0.80(95%CI:0.64−0.99,p=0.04)とインパクトがやや弱いのも事実。実は、後で述べるように、この評価がセツキシマブ登場がもたらす治療体系への影響を予想する上での大きなポイントになる。

日本放射線腫瘍学会学術大会のBio−Radiationのシンポジウム会場は空席が目立った。放射線腫瘍医の関心を刺激することも普及のための課題だ。

CRTかBRTか?
 以上までが実は、話の前段だ。Bonner試験は、2006年に報告された6年前の試験であり(データのアップデートは2010年に報告)、多くの専門医にとって、論文などによって既知の話である。重大な問題は、局所進行頭頸部がんにはCRTとセツキシマブによるBRTとのどちらを選択するかということだ。どちらを選ぶにしても、その根拠を提示して患者に説明し、相談する必要があるからだ。

 この問題については、11月23日から東京で開催された日本放射線腫瘍学会第25回学術大会(会長:東京女子医科大学放射線腫瘍学講座教授・三橋紀夫氏)のシンポジウム(「Bio−Radiation:新たな治療選択肢の確立を目指して」)で討議されている。