手術は外科、薬物療法は内科
佐々木 先日、乳がん患者団体の「あけぼの会」に呼ばれて講演したのですが、その際に三重大学医学部附属病院乳腺センター教授の小川朋子氏と会ってお話しする機会がありました。三重大学では乳腺外科は手術だけしかしない。薬物療法は術前術後、転移、再発についても全部腫瘍内科が担当すると。非常にクリアな話ですね。

 日本の場合には、乳がんは、外科医が薬物療法を極端にやり過ぎる。それには2つ理由があって、外科医であっても、研究のテーマを薬物療法にしている先生が非常に多いということと、もう1つは今度は腫瘍内科医のサイドで乳がんに対応できるような人材が十分に育成されていないことです。しかし、基本は、薬物療法については腫瘍内科医の知識や経験の方が乳腺外科医よりもはるかに上になるので、乳がんについても同様の動きになるだろうと思います。

―外科の方にちょっと伺うと、学位を取るためには、手術ではなかなか難しいので、薬物療法を研究するというような話もありますが。

佐々木 それは邪道であって、それだったら、腫瘍内科だとか、そういうところへ来て、その研究をすべきだ。

―先日、ある大学の消化器内科の肝胆膵の専門家と話をしました。その先生は腫瘍内科に肯定的ではなくて、腫瘍内科といっても現実にドレナージをできないのでは、とても治療を行うことはできないということでした。

佐々木 それは本末転倒な議論です。ドレナージができないから腫瘍内科がやってはいけないという話では全然ない。いわゆる診断だとか治療的なインターベンションと薬物療法としては、専門性がかなり違う。ただ、肝胆膵のように、薬物療法がまだ発展途上で、選択肢が2〜3種類しかない疾患については、ドレナージをするような医師が薬物療法をするという状況もあり得ます。乳がんや肺がんのように多彩な薬物療法が必要になってくるようなケースだと、すべてを1つのグループが全部対応するというのは無理になってきます。特に大学病院であればあるほど、高度に役割分担がされなくてはいけないと思う。

 では、米国で胆嚢がんをやっている腫瘍内科医が、ドレナージが出来ないから胆嚢がんの薬物療法はしない、などというのは笑い話になってしまう。だから、世界のスタンダードが何であるかということをやはりきちんと考える必要があります。

 そういう考えをする先生がいらっしゃるので、どうしても古い大学ほど腫瘍内科という考えについては、自分たちの領土が侵されるという意識でネガティブな意見をいわれる方が多いのだと思います。