4大がんは腫瘍内科の専任とする
―昭和大学はどうしますか?

佐々木 ちょうど呼吸器内科と消化器内科の診療科長、教授が退任になって、新しくなろうとしています。そこで学内でまずCancer Boardを組織しようという話し合いが行われました。

 その一環として、学内でのがんの薬物療法をもう少し整理しようとしています。というのは、かつて腫瘍内科ができる前までは、消化器がんは消化器外科と消化器内科で診療が行われていました。消化器外科の教授が代わって、今度は腫瘍内科が消化器外科の代わりに消化器がんを担当することになりました。しかし、消化器内科と腫瘍内科というダブルスタンダードが存在しているわけで、それは決して大学としてはいいことではない。要するに、患者さんがどこの科に行くかによって治療方針が多少なりとも違うということが生じるわけです。そのため、そういう状況を是正しようということで、5大がんのうちの肝細胞がん以外は腫瘍内科が診るという方針が大学として決定された。

―肝細胞がんは特別なんですね。

佐々木 肝細胞がんは、ベースに肝炎、肝硬変を持った患者さんが多いという特徴があります。治療法も、エタノール注入だとか、ラジオ波焼灼だとか、肝動注だとか、局所的なinterventionalな方法が入ってくる。そうすると、腫瘍内科ではそういった状況にちょっと太刀打ちができません。

 肝細胞がんは欧米では腫瘍内科が担当していますが、アジアの場合には、B型、C型のウイルス肝炎をベースとしたものが多いので、結果として肝臓内科医が担当せざるを得ない。これはいたしかたない。

―肺がん、大腸がん、胃がん、乳がんは腫瘍内科が診ることになるわけですね。

佐々木 少なくとも腫瘍内科がイニシアチブを取って薬物療法をするという方針が下ったわけです。

 これは、昭和大学のようなある程度伝統のある大学での、腫瘍内科を活性化させるための1つの方法であろうと思います。伝統のある大学になればなるほど従来の診療科の利権といっては語弊があるかもしれないけれども、既得権という感覚が関係者の間ではものすごく強固で、なかなか主要ながんの薬物療法を腫瘍内科が一手に引き受けるというような状況は得られにくいと思われました。

 外科が圧倒的に強くて、外科が薬物療法のイニシアチブを取っている大学では、腫瘍内科が生まれ難い。対照的に、外科が弱くて腫瘍内科をバックアップしてくれるような状況にあっても、今度は臓器別の内科が各がんを離さないということになるわけです。ですから、わが国の大学でもようやく、腫瘍内科という講座だとか診療科がいっぱいできてきたけれども、今後はそれぞれの大学がやはり協力して、真に欧米流の腫瘍内科に脱皮する必要があるだろうと思います。

スタッフの増員は私立大学が有利
―欧米の腫瘍内科というとそのスタッフの充実ぶりに日本と格段の違いがあると指摘されます。

佐々木 僕らもまだ3人しかスタッフがいない。3人では何もできないし、理想ばかり言っていても仕方がありません。やはり正式な教員のスタッフ、つまり教授から助教までは10人規模のグループにならないと、4大がんの薬物療法を責任を持って遂行することは無理だろうと思います。

 その意見では、私立大学であることのメリットもそこに発揮されるわけです。国立大学の場合には定員法で縛られているので、どこかを削って腫瘍内科を作ったけれども、その腫瘍内科が非常に小規模な腫瘍内科であるということがよくあります。すると、多くの腫瘍をカバーしておらず、腫瘍内科として実質的に機能できないというところも珍しくありません。

―昭和大学の場合、病院長がそこにゴーの決定を下した理由はどこにあるんでしょう。

佐々木 最大の理由は、昭和大学自体ががんに対して余り強い大学ではなかったということです。がんが日本人にとって最も重要な疾患になったにもかかわらず、昭和大学のがんの診療というのはそんなにパワフルではなかったわけです。だから、それを強化しようということ。

 さっき言ったように、ダブルスタンダード、トリプルスタンダードを解消しようと。昭和大学の場合には、分院を多く持っています。大きな分院だけでも3つ持っている。そうすると、今度は、旗の台の本院が中心となって、分院の活性化にまで手をつけようということです。

 これは1つのモデルになります。トップダウンでシステムを変えていく、当事者同士の話し合いでは、なかなか解決策は見いだせないと思う。理事長、病院長の強い意志があって、腫瘍内科の活性化が徐々に進みつつあるというのが昭和大学の現状です。