皮膚障害の発生頻度もセツキシマブでは9割近くに達するのに対して、ニモツズマブは1割程度と報告されている。それを裏付けるように国内の臨床試験でもGrade 3以上の肺炎、皮膚障害は認められなかった。

 国内臨床試験の結果の中で興味深いのは、扁平上皮がん(squamous)と非扁平上皮がんとの間で効果に大きな違いが現れたことだ(図3)。扁平上皮がんへの有効性は非扁平上皮がんに対する効果を上回る可能性が示唆された。副次評価項目とした無増悪生存期間(PFS)では、扁平上皮がんと腺がんとの間で大きな差が見られた。

 ニモツズマブは、標的であるEGFR分子の密度が高い細胞ほど効果の高いことが前臨床試験などから明らかになっている。また、胃がんを対象にした臨床研究で、塩酸イリノテカン(CPT−11)+ニモツズマブとCPT−11単独療法を比較した臨床試験では、EGFR発現量が多い症例で、CPT−11とニモツズマブの奏効率が高くなる傾向が確認されている。国内の第2相臨床試験に参加した患者のEGFR密度を調べたところ、扁平上皮がんは腺がんよりもEGFR密度が高い傾向にあった。「傍証に傍証を重ねた結果からの推論であるが、扁平上皮がん患者の腫瘍細胞にはEGFRがより高密度に発現した細胞が多く、これが最終的な生存期間の違いに結び付いた可能性はある」と里内氏。

 「まず扁平上皮がんで有効性を検証し、その中でEGFR発現量と効果の関連性を検討していく」と同氏は語っている。将来は病理型ではなく、EGFR密度をバイオマーカーにした患者選択が採用される可能性がある。

旗色悪い血管新生阻害薬
 EGFR阻害薬に比べて放射線療法との相性が悪い分子標的治療薬もある。血管新生阻害薬だ。有効性を示すことができず、しかも腸管穿孔などの重篤な有害事象も増える傾向があることから、すでに「放射線療法との併用は禁忌と考えるべき」と言い切る専門家もいる。

 今回のシンポジウムでは、近畿大学放射線医学教室の西川龍之氏が、血管新生阻害薬と放射線療法の併用に伴う有害事象の発生を報告した。2008年から2011年に血管新生阻害薬を伴う分子標的治療薬の投与の既往がある30症例、39部位に緩和的放射線治療を行い、Grade 2の食道炎2例、Grade 3の結腸出血1例を経験したという。

 血管新生阻害薬の放射線療法と相性が悪い原因は不明だと、前出の西村氏は指摘するが、それでも考えられる理由はある。血管新生を阻害することで腫瘍組織に酸素が不足するためだ。放射線によるDNAの損傷には活性酸素の介在が不可欠で、低酸素状態で放射線の有効性を維持するためには、通常の3倍の線量を照射する必要がある。血管新生阻害薬の作用で低酸素状態となれば、放射線の威力は低下する。一方で、腸管穿孔や潰瘍などの有害事象が増える理由は、血管新生阻害によって血管内皮細胞の増殖が抑制されていることが関係しているのかもしれない。

 このシンポジウムでは、フロアの参加者から「我々の施設では、血管新生阻害薬を使用した患者に放射線を照射する場合には、1週間以上の間隔を取るようにしている」という発言があった。各施設が独自に対策を取っている様子が分かるが、問題はどのくらいWash out期間を取れば、重篤な副作用を回避できるのかは全く明らかになっていないことだ。西村氏は、「血管新生阻害薬を使用して1年を経過して放射線を照射して腸管穿孔が出現したとの報告もあり、さらには放射線照射を先に行って血管新生阻害薬を使っても穿孔が出現したという報告もある」と指摘する。

 それでも血管新生阻害薬の使用を全面的に回避した治療は現実的ではなく、また放射線照射を控えることもできない。そこで近畿大学では、血管新生阻害薬に限らず、患者の薬物使用歴を放射線科医師も正確に確認するようにしている。また患者にも、合併症のリスクがあることを説明している。血管新生阻害薬を使っている場合には、なるべく腸管に照射しないなどの工夫はするし、院内のCancer Boardでも議題に取り上げ、内科や外科との情報を共有するようにしている。しかし、「症状のある骨転移がある場合には、照射せざるを得ない。現在のところ警戒を強める以上の対策は難しいというのが本音だ」と西村氏は苦しい胸の内を吐露する。

 化学放射線療法の意義は、化学療法単独では得ることができない長期生存が得られるためだ。しかし、長期生存が得られるといっても、現状ではその割合は高くない。里内氏は、「化学放射線療法によって、肺がんの生存期間がどんどん改善しているわけではなく、抗がん剤を変えたり、照射方法や線量を変えたりと手をかえ品をかえの試行錯誤が続いている状態だ」と語っている。