がん研有明病院に7月1日付けで、サルコーマ(sarcoma、肉腫)の研究と治療を行うサルコーマセンターが誕生した。サルコーマは、全てのがんの1%という希少がんであり、多くの臓器に発生するために、患者集積も専門家の育成も難しかった。「サルコーマセンターの設立は、希少がん対策のモデルケースになるはず」とがん研有明病院院長の門田守人氏は胸を張る。


記者会見の司会を務めたがん研有明病院理事の土屋了介氏。

 「固形がんのトレーニングと経験を積んできた医師にとって、サルコーマは不得手な悪性腫瘍」と指摘するのは、がん研有明病院理事の土屋了介氏(元旧国立がんセンター中央病院院長)。8月17日にがん研有明病院で開催された、サルコーマセンター設立記者会見で司会を務めた同氏は、「『サルコーマの疑い』という病理レポートが上がってくると、多くの医師は困ることになる。どこかに紹介しようにも見当がつかないというケースが珍しくない」と言う。

 サルコーマは、上皮性組織に発生する「癌(がん)」と異なり、骨、脊髄、筋肉、脂肪、関節、神経などの非上皮性間葉組織に発生する(表1、図)。4肢に比較的多く発生することから整形外科医が主治医となることが多いが、実際は消化管や婦人科臓器に発生することも珍しくない。がん研有明病院が旧癌研時代の2005年から集積した症例896例の臓器別内訳(図)によれば、四肢は多いが全体の52.4%と半分に過ぎない。症例数が少ない上に、いろいろな臓器に発生することから、臓器別の医師養成を基本としてきた従来の医療では、膵消化管腫瘍などと並んで、専門的に診療する医師が育ちにくい悪性腫瘍の筆頭ということができる。

図● サルコーマ896例の発生部位(2005〜2010年)

 がん研有明病院では、副院長で整形外科の松本誠一氏がサルコーマの治療にあたってきた。院長の門田守人氏は「当院では豊富な実績があり、松本氏からもサルコーマセンター設立の提案を受けてきた。ながらく実現しなかったのが、7月1日の理事会で承認され、設立となった」と説明した。

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基礎から薬物療法まで
 サルコーマセンターの組織は別掲(表2)のようになるが、特徴的なのは基礎研究部門や薬物療法部門が含まれていることだ。とりわけ、同院の腫瘍内科医の高橋俊二氏が参加していることが目を引く。従来多くの医療機関では、サルコーマに対しては、外科医が手術と化学療法とを引き受けてきた。がん研有明病院でもその事情は変わらないが、センター長の松本氏は、「世界ではサルコーマに対する分子標的治療薬などの新薬の開発が進んでおり、従来よりも複雑な治療の登場も想定される。外科医が手術とともに薬物療法を行う状況は早晩過去のものになる」と展望する。