グループ共通の情報基盤が徳洲会がん医療の強み
湘南厚木病院長・篠崎伸明氏(徳洲会専務理事)
 徳洲会が大阪に最初の病院を開設したのは1973年。以来、「24時間救急対応」、「いつでも誰でもどこでも医療を受けることができる」を基本理念に、社会貢献してきたという自負があります。2004年になって、徳田虎雄理事長から、「これからはがんで命を落とす人が増えてくる。こうした患者を減らす社会貢献に取り組むように」という指示がありました。そこで、徳洲会グループの中にオンンコロジープロジェクトを立ち上げ、私がその事務局を担当することになりました。折しも、文部科学省のオーダーメード医療実現化プロジェクトがスタートしており、プロジェクトの中心だった東京大学医科学研究所教授の中村祐輔氏とSNP(1塩基置換遺伝子多型)プロジェクトで連携することになりました。このプロジェクトは現在も続いています。
治療レジメンの標準化から出発
 がんの基礎研究への貢献のために、オーダーメードプロジェクトに参加した。では、診療について何をしようかという議論になりました。まず注目したのが、薬物療法のレジメンです。当時は、徳洲会グループ内の病院間はもとより、同じ病院内でも医師が違うと異なる薬物療法が行われているという状況でした。そこで、グループでがん診療に取り組んでいた医師らでがんの種類別に小委員会を組織し、治療レジメンのグループ内の標準化に着手しました。
 最初は、愛知県がんセンター名誉総長の小川一誠氏に指導をお願いし、次に札幌医科大学教授の新津洋司郎氏に顧問となっていただきながら、約180の標準レジメンを作成しました。現在、グループの22病院が採用しており、がん治療の90%をこれら標準レジメンで行っています。しかも研究の進歩に伴い、個々のレジメンはリアルタイムで更新することにしています。
グループ傘下に医療IT専門企業
 徳洲会では、傘下の病院に共通したがん登録システムを構築していますので、がん患者の動態を瞬時に把握することができます。毎年、新規のがん患者はグループ全体で9,700名ほどです。こうした標準レジメンの作成と改訂、さらにがん登録の基礎になっているのが、グループで統一した電子カルテと電子オーダリングシステムです。
 徳洲会は、グループ病院のデータシステムの管理や開発、電子カルテの導入支援などを行う「徳洲会インフォメーションシステム株式会社」(TIS)という専門IT企業を立ち上げています。TISのシステムでは、全国のグループ内のどの病院のどの医師がどのような患者に対してどのような治療を行ったという情報が、20分毎に更新されます。
 将来は、このシステムを拡充して、レジメン単位や病院単位、さらには医師一人ひとりの治療のアウトカムを即座に把握できるようにする計画です。あるがんの同じステージにある患者の治療アウトカムにばらつきがあるとしたら、すぐに是正しなければなりませんが、こういう意思決定が速やかにできることになります。こうしたデータの収集は、新しい治療の副作用の予測にも威力を発揮するでしょう。当然、新薬の治験データの迅速な収集や、経営分析にも利用できるはずです。
湘南鎌倉がんセンターへの期待
 いま計画が進展している湘南鎌倉がんセンターは、民間病院では屈指のがんセンターになるはずです。既存のがん専門病院の中には、旧態依然とした縦割りの弊害ゆえに、診療科間の連携が不十分で、患者に不利益をもたらしている病院もあるのではないかと思います。新しいがんセンターでは、そうした診療科の枠にとらわれず、柔軟にチーム医療に貢献する新しい資質を備えた医師に参加して頂きたい。がん診療の分野で豊富な人脈を持つ太田先生には、ぜひそういう人材を集めてほしいと願っています。(談)