抗がん作用を期待したメトホルミンの処方は時期尚早
 がんとメトホルミンの関係に関心が高まっているが、現時点で抗がん作用や術後のがん再発予防効果を期待して、メトホルミンを使用することは時期尚早だ。ある糖尿病専門医は「メトホルミンの安易な使用は、重篤な副作用である乳酸アシドーシスの発症を増やしかねない」と警鐘を鳴らす。メトホルミンは安全な薬というイメージが強いが、ここ数年乳酸アシドーシスを起こす例が相次ぎ、中には死亡例も出ている。
 今年2月1日、日本糖尿病学会の「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」が「ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation」として具体的な注意事項を公表している(表3)。それによると、乳酸アシドーシスの症例に認められた特徴として(1)腎機能障害患者(透析患者を含む)(2)過度のアルコール摂取、シックデイ、脱水など、患者への注意・指導が必要な状態(3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者(4)高齢者にはメトホルミン使用の特段の配慮が必要だという。
 現時点でがんリスクを明確に下げるというエビデンスはない。
表3● ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation

1) 腎機能障害患者(透析患者を含む)
メトグルコを除くビグアナイド薬は、腎機能障害患者には禁忌である。
メトグルコは、中等度以上の腎機能障害患者では禁忌である。SCr値(酵素法)が男性1.3mg/dL、女性1.2mg/dL以上の患者には投与を推奨しない。高齢者ではSCr値が正常範囲内であっても実際の腎機能は低下していることがあるので、eGFR等も考慮して腎機能の評価を行う。ショック、急性心筋梗塞、脱水、重症感染症の場合やヨード造影剤の併用では急性増悪することがある。尚、SCrがこの値より低い場合でも添付文書の他の禁忌に該当する症例などで、乳酸アシドーシスが報告されている。

2) 過度のアルコール摂取、シックデイ、脱水、などの患者への注意・指導が必要な状態
全てのビグアナイド薬は、過度のアルコール摂取、脱水の患者で禁忌である。
以下の内容について患者に注意・指導する。また患者の状況に応じて家族にも指導する。アルコール摂取については、過度の摂取を避け適量にとどめ、肝疾患などのある症例では禁酒する。シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し、主治医に相談する。脱水を予防するために日常生活において適度な水分摂取を心がける。

3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者
全てのビグアナイド薬は、高度の心血管・肺機能障害(ショック、急性うっ血性心不全、急性心筋梗塞、呼吸不全、肺塞栓など低酸素血症を伴いやすい状態)、外科手術(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)前後の患者には禁忌である。また、メトグルコを除く全てのビグアナイド薬は、肝機能障害には禁忌である(メトグルコでは軽度〜中等度の肝機能障害には慎重投与である)
なお、経口摂取が困難な患者や寝たきりなど全身状態が悪い患者には投与すべきではない。

4)高齢者
メトグルコを除くビグアナイド薬は高齢者には禁忌である。
メトグルコは高齢者では慎重投与である。高齢者では腎機能、肝機能の予備能が低下していることが多いことから定期的に腎機能、肝機能や患者の状態を慎重に観察し、投与量の調節や投与の継続を検討しなければならない。特に75歳以上の高齢者ではより慎重な判断が必要であり、原則として新規の患者への投与は推奨しない。