安全性については、現在のところ特に心配する点はないようだ。1回の検査による平均被曝線量は約5.3mSvで現在の標準的なFDG−PET検査の約6.7mSvと同等で、一般病棟や外来でも実用可能な検査だ。またPETプローブとして投与した抗体量も53〜87μg/体(平均73.5μg/体)で、通常の治療に使うトラスツズマブ(6mg/kg/回)の約5000分の1以下(体重60kgとして計算した場合)という微量で、有害事象が出現する可能性は極めて低い。

抗体医療の新局面を拓く可能性
 この検査が日常的に使用できるようになれば、HER2検査の精度や感度を巡って繰り広げられてきた議論に大きな影響を与えることは必至。適応拡大したものの「乳がんに比べ組織学的多様性が高く、HER2の診断の確定が難しい」と戸惑いの声が上っている胃がん領域でも、この“トラスツズマブ・イメージング技術”は注目せざるを得ない技術となるだろう。

 さらに抗体医薬の場合、抵抗性の獲得が治療の成否を握っている。抵抗性の仕組みを解明するためにもHER2分子の動静を把握することは必須だが、渡辺氏は「分子イメージング技術がこうしたHER2分子のアップレギュレーションやダウンレギュレーションを追跡する有用な技術になるはずだ。またトラスツズマブの副作用として注意を要する心毒性の仕組みの解明や投与前の発症予測などにも期待できる」と語った。

 今回の発表で紹介されたDOTAが抗体医薬の種類を問わず、64Cuを標識できることは、トラスツズマブ以外の抗体の研究に用いることができることを意味している。理化学研究所では、大腸がんの抗体医薬セツキシマブのPETプローブ化に成功しており、既に動物実験でその有効性を確認しているという。