光冨 マイクロダイセクション(microdissection)することになりますね。

大江 そうですね。だから細胞レベルでは判別できないのではないですか。

光冨 最近、変異選択的に結合するmutant specific抗体というのがありますよね。あの染色の写真を見ても、あまりまだらにはならないんですね。均質に染まるので、heterogeneityは問題にならないと考えています。

大江 両者が混在しているがんの組織の中から野生型の細胞が育ってくれば、再発の原因になり得ると思いますが、どうですか。

光冨 ただ、1万個に1個もないのかと言われても、それは分からないですね。

大江 実際に再発して、がん細胞が再増殖したときの検体でどうなっているかですね。

大江 実際に再発して、がん細胞が再増殖したときの検体でどうなっているかですね。

西條 EGFR変異と異なる2次的な変異が、治療前から存在していた可能性もあります。

光冨 EGFR変異が入るというよりは予め存在していた別の変異が存在して、抗EGFR阻害薬の働きによって選別されてくるという考えを支持するデータが多いことは事実です。

EML4−ALK遺伝子発見の意義
西條 driver mutationがいろいろ見つかってきていますけれども、肺の腺がんに限っても、EGFRに限らず、自治医科大学の間野博行氏が発見したEML4−ALK遺伝子とか、あるいはBRAF遺伝子などの変異が低頻度ながら発見されてきました。慢性骨髄性白血病のBCR−ABL遺伝子のように染色体の転座によって生じた融合遺伝EML4−ALK遺伝子によって肺がんが起こっている例が発見されました。EML4−ALK遺伝子発見の意義をどう考えますか。

大江 EML4−ALKのような融合遺伝子があるというのは、非常にびっくりしましたね。最近また、KIF5B遺伝子とRET遺伝子の融合遺伝子が見つかっています。これらは非常に有望な治療の標的になる可能性があると思っています。重要な発見だと思います。

西條 driver mutationはEGFR変異だけだろうと考えられていましたが、EML4−ALK遺伝子の発見で、がらっと変わりました。意外と数多くあるのではないかということになったと思います。米国ではどのように考えられているんでしょうか。

光冨 先日、米国の学会に参加したのですが、既に融合遺伝子を網羅的に拾い上げていこうという試みが始まっていました。問題は多数の融合遺伝子が見つかってくるのですが、それらが真にdriver として機能しているのかどうかは明らかではない。機能を調べていく必要があり、実際に調べるとpassengerでしかない融合遺伝子が多いということで、少しがっかりしました。

 しかも、融合遺伝子の組み合わせも多種多様で、遺伝子が切れてくる場所も異なる。そうなると、EGFR変異のように簡単にスクリーニングすることができなくなるんです。それでもdriver遺伝子の発見は治療の強力な手掛かりになることは確かです。単純に強力なdriver遺伝子が今後も見つかってくるといいなあと思っていますが。

治療抵抗性への対策
西條 EGFRに限って考えると耐性の仕組みを考えることが重要です。今後どのような戦略が考えられますか。

大江 1つは、T790Mのような2次的変異に対しても効くような薬の開発です。ATP結合ポケットに変異があっても抑制するTKIも開発されています。個人的には、やはり殺細胞性の抗がん剤をうまく組み合わせることが重要であると思います。