西條 一方、製薬会社が重要な副作用だけをセレクトして送るのも難しいですね。そのような状況のため現在は、市販後調査により非常に注意深く見ていけばいいということになるわけですね。

大江 良いかどうか結論することは難しいのですが、そうしないと有効な薬が早く患者さんのところに届かない。その不利益が大きくなると思います。

西條 新しい抗悪性腫瘍薬の大半は、分子標的治療薬ですね。分子標的治療薬は副作用が少ないと言われているけれども、結構重篤な副作用が出ますね。従って、ほとんどが全例調査になっています。あれで大体引っかかると思いますか。

大江 おそらく引っかかるんじゃないかと思います。

西條 分かりました。

遺伝子分類か組織分類か
西條 EGFR変異の遺伝子検査には、いろいろな方法がありますね。 

光冨 そうですね。まず検体についてですが、特に3、4期とかのような症例の場合、組織が比較的取りにくい腫瘍ですよね。ほかの乳がんとか、胃がんなどとは違います。肺がんではなかなか検査がしにくい。なおかつ正常細胞のコンタミネーションが多いがんです。従って、肺がんというのは遺伝子検査が難しいがんだと言えます。本来なら、塩基配列を決めてしまうことがゴールデンスタンダードということになると思いますが、肺がんではそれでは不十分です。

 でも、日本の研究者たちは、独自にPCRの高感度法を開発し、あるいは海外で開発されたScorpion−ARMS法などがすぐに入ってきて高感度の遺伝子検査が普及しました。

 今やイレッサは非小細胞肺がんのキードラッグです。そのためには、EGFR変異の有無をできる限り早期に知る必要があります。2011年に改訂された日本肺癌学会のガイドラインでは、EGFR変異の有無などの遺伝子による肺がんの分類は従来の組織分類よりも重要な情報と位置付けられています。

西條 肺がんが今まで、特に非小細胞がんが、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんと分類されてきたわけでありますが、扁平上皮がんは、今のところよく分かりませんが、腺がんは、こういう分子異常でも分類されるようになってきたと思います。今後肺がんの分類の概念はどういうように変わっていくということですか。

大江 やはり、その遺伝子異常に特異的な薬がうまくフィットするようになってくると、当然、分類が変わってくるし、それによって治療の戦略も変わってくる。むしろ、そうなってくるといいなとは思いますが。

西條 腺がんの新しい分類が、世界肺がん会議(IASLC)で検討されていますね。あれは、こういう概念が十分まだ入っていないですね。

光冨 そうですね。分子、遺伝子異常と形態というのは、ある程度相関するけれど限界があります。やはり形態だけでは予測できないということで、現行のWHO分類は形態学的分類ですね。bronchiolo−alveolar cell carcinomaには、mucinousとnon−mucinousがあります。mucinousはK−rasが多いとか、non−mucinousは非常にEGFR変異が多いという傾向はありますが。それでは形態を見れば、遺伝子検査はしなくていいのかというとそうではない。病理の先生は悩ましいところだと思いますね。