浜松オンコロジーセンターで使われているカメラ。ペットボトルを利用したカメラスタンドは、手作りカンファレンスの象徴だ。

渡辺 ホルモンとHER2の両方のルートを抑えるべきではないでしょうか。

 日本乳癌学会の乳癌診療ガイドライン(2010年版)では、診療ガイドライン委員長を務めた渡辺氏に対して、相原氏も診療ガイドライン薬物療法小委員会の委員に名を連ねている。学会を離れて、2人の論客の討論が、浜松と大阪に分かれて続いた。症例を提示した宮良氏は、手術に傾斜しつつ、化学療法についても検討し、次回のカンファレンスでまた相談したいと議論を引き取った。

適応外の薬も積極的に討論
 症例検討に続き、mTOR阻害薬エベロリムスに関わる“教育セッション”となった。講師は浜松オンコロジーセンターの薬剤師の宮本氏。テーマはホルモン耐性進行性乳がん患者に対するエキセメスタン+エベロリムス対エキセメスタン単独療法の安全性と有効性とを比較した国際共同臨床第3相試験であるBOLERO−2試験のレビュー。宮本氏がスライドを示しながら、試験の結果を説明していく。

 「細胞内にあるmTORはエストロゲン受容体(ER)を活性化しホルモン耐性を促す一方で、インスリンの分泌不全を引き起こし、これが耐糖能異常の原因になります」

 mTOR阻害薬については、日本国内ではエベロリムスとテムシロリムスの2剤が腎細胞がんの治療に使われ、2011年にはエベロリムスの膵神経内分泌細胞(pNET)への使用が承認されている。しかし、乳がんについては、まだ臨床現場に導入されていない。

 BOLERO−2試験では、主要評価項目となった無増悪生存期間(PFS)で、エキセメスタン単剤に対してエベロリムス併用群は7.4カ月で、ハザード比0.44という成績だった。乳がん治療医の観点から、内分泌療法抵抗性となった乳がん患者に有効性を示した同薬に対する関心は高いようだ。自主独立のカンファレンスだけあって、様々な意見が出る。

 「Journal of Clinical Oncology誌にメトホルミン(糖尿病薬)にmTOR阻害活性があると報告が出た。メトホルミンを使用してもよいのか」

 「メトホルミンは低血糖にならないようだから、乳がん患者に使うことも可能ではないか」

 「有害事象の心配がないならばゲリラ的に使ってみてもいいのではないか」

 「メトホルミンにはアンチエイジング効果が期待できるという報告もあるが、どうなのだろうか」

自由な意見交換が地域格差の是正に貢献
 日本のがん診療では地域格差の存在が問題視されてきた。政府はがん診療連携拠点病院を認定し、がん診療の均てん化を促進、それは一定の効果を上げてきた。たちてんウエブカンファレンスは、国策と上るルートは違うが、目指すところは同じだ。

 宮良氏は「エビデンスに従って医療を進めるといっても、実際の臨床では明確なエビデンスがない問題にも数多く遭遇する。渡辺先生や相良先生などの指導的な立場にある先生方や民間病院として最多の症例を診ている相良病院の先生方と意見交換できることの意義は大きい。沖縄から東京に行くには大変な時間と労力がかかる。沖縄の患者さんに現在の標準治療を実践することができるということで、たちてんウェブカンファレンスは大切な機会」と語っている。