写真8 国立がん研究センター中央病院副科長の奥坂拓志氏。

国際試験参加が実現したエベロリムス
 日本の医療界では認識に遅れがあるというpNET。その影響は診断薬や治療薬の開発の遅れという形で、出現している。国立がん研究センター中央病院肝胆膵腫瘍内科副科長の奥坂拓志氏は、診断に重要なオクトレオスキャン技術、世界の標準治療に用いられる抗がん剤Streptozocinが日本では未承認である実情を問題点として指摘した(Streptozocinは厚生労働省が製薬業界に開発を勧告、臨床試験が開始されている)。

 前述のとおり、pNETでは標準治療として使われる診断薬や治療薬が世界の標準から後れをとっているのが現実だ。患者が少ないことから世界のどの国も自国だけで臨床試験を行うことが困難であるため、国際試験に参加することが新薬候補の評価のひいては承認の近道になる。国内におけるエベロリムス承認の決め手となった、RADIANT−3試験(図2)でも奥坂氏ら日本の医師らが製薬会社に働きかけ、日本からの症例登録が実現した経緯がある。このRADIANT−3試験の結果、エベロリムスは進行再発pNET患者の無増悪生存期間(PFS)の中央値をプラセボの4.6カ月から11.0カ月に改善することが示された(ハザード比0.35 [95%CI:0.27 −0.45]。全症例数410例のうち国内症例は40例。日本からの症例を対象にしたサブ解析では、PFS中央値はプラセボ群の2.83カ月に対して、エベロリムス群は19.45カ月(ハザード比0.19 [95%CI:0.08−0.48])とやはりPFSの改善効果が確認された。

 患者の多いがんに比べて希少がんの診断や治療技術の開発は遅れる傾向にある。ほかのがん以上に患者自身が臨床試験への関心を持つこともドラッグラグを予防する鍵になるだろう。

医師だって情報不足
 この日のフォーラムでは、参加した患者や家族から、NETに関する情報の不足を訴える声が相次いだ。「どこの医療機関にかかればいいのか分からない」「現在受けている治療が最適な治療であるのか不安だが、問い合わせする場所が分からない」「同一の医療機関の中で医師同士の見解が分かれる」―。このような情報不足に悩むのは患者の側ばかりではない。

 インターネットを介して伊藤氏のもとには毎週のようにpNET患者を診療する全国の医師から問い合わせが来る。「手術をして断端陰性だったが化学療法を追加すべきか」「この後、どのような治療法が必要か思いつかない」など。伊藤氏は、「患者数が少なくまとまった臨床試験を組むことが困難なNET治療では推奨グレードが高いアドバイスは難しい」と前置きした上で「欧州NET学会などと協力して最新の情報を日本に持ち込むようにしている。しかし専門家のコンセンサスのレベルにとどまる情報が多く、この現状でよいのかと思うこともある」と話す。