写真3 参考書籍「こうして鑑別こうやって治療 SMT&GIST」(メジカルビュー社、3,600円+税)。西田氏が編著者を務めており、消化管の粘膜下腫瘍(submucosal tumour:SMT)とGISTの診療から治療までを紹介。症例写真が豊富で、鑑別が困難な類似疾患も詳細に解説している。

 もう1つはGISTであったのに別の腫瘍と誤診されるケース。

 初回の手術が首尾よくいけば7割の患者は再発することなく一生を終えることができる。
しかし、手術した医療機関がGISTであることに気付かず、簡単な粘膜下腫瘍と判断し、結果的に腫瘍を内包する膜を傷つけてしまい腫瘍細胞を撒き散らしてしまうことも珍しくない。

 再発した場合はイマチニブ(KIT遺伝子陽性のGISTが適応)やスニチニブ(イマチニブ抵抗性GISTが適応)などの分子標的治療薬を含めた治療が必要になる。もし正しく診断されていないと再発転移後の標準治療を受ける機会を逸することになる。それどころか、胃がんなどの標準治療であるTS−1とシスプラチンが使用されているかもしれない。

 最初に診断した医師がGISTと気付かない場合、こうした症例が大阪警察病院のような専門診療ができる医療機関に照会されることはない。患者もGISTで気付いていないため、セカンドオピニオンを求めて西田氏のもとを訪れることはない。胃がんの標準治療を行ったが奏効せず、治療抵抗性の症例ということで済まされている可能性もあるかもしれない。

 西田氏は「誤診の実数は少ないかもしれない。しかし患者個人にとっては大問題だ」と語る。

深刻な誤診のリスク
 欧州がん学会の肉腫の専門家が診断された消化器がんと肉腫の症例を中央センターが解析したところ“肉腫”と診断されていた症例の10%が実はGISTなど別の肉腫であった。病理医も経験する症例が極端に少ないがんでは正確に診断することが難しくなる。正確な診断と治療方針の決定ができるようになるには専門的な教育が必要になるが、その機会も場も十分ではない。臨床研究も少ないことから、疾患の情報が患者だけではなく、医療側にも不足している。科学的根拠に基づいた医療(EBM)は望むべくもないという状況にある。

 「胃がんや大腸がんのような患者が多いがんでは、専門家は自然発生的に生まれる。GISTのような希少がんでは症例を意図的に集中させ、診療と教育のための組織を作った方が効率の面からも現実的。全国にいくつか拠点病院を作り、そこに患者と専門家を集約する体制が必要だ」と西田氏は指摘している。