(2) IPASS試験
 Iressa Pan-Asia Study (IPASS)試験が“イレッサ”にとっても起死回生の逆転満塁ホームランであることは誰も異論はないと思われる。IPASS試験は臨床的特徴により選択した患者を対象とした比較試験である。アストラゼネカ社が“イレッサ”の効果に人種間差ethnic differenceがあることを認め、アジア人、腺がん、非喫煙あるいは軽度喫煙者、すなわちEGFR変異率の高いpopulationを対象としている(図1)。

 IPASS試験は未治療非小細胞がんに対する標準的治療の1つであるカルボプラチン+パクリタキセルと“イレッサ”をhead to headで検討する比較試験であった。アジアの9カ国、87センターが参加し2006年3月から2007年10月の間に1,217例の患者が登録された。IPASS試験ではEGFR変異、増幅、発現を可能な限り検討することになっていた。主要評価項目のPFSは不思議なカプランマイヤー曲線となった。治療開始6カ月まではカルボプラチン+パクリタキセルの治療効果が優れていたが、それ以降は“イレッサ”群の方が良好であった。このようにハザード比が時間と共に変動するPFS曲線の解析にCox Proportional Hazard Modelを用いることにはコンセンサスがないと思われるが、事前に計画されていた解析結果ではハザード比(HR)=0.741(95%信頼限界0.651-0.845)p<0.0001と“イレッサ”の方が優れていた(Mok TS et al. N. Engl J. Med 361:947-957, 2009、図2)。

EGFR変異がなければ“イレッサ”は効かない
 もしこれだけのデータであれば、物議を醸すだけだったかもしれない。重要なデータはバイオマーカー解析に基づく研究成果であった。1,217例の登録患者中バイオマーカー解析に同意の得られた患者は1,038名(85%)、実際サンプルが得られたのは683名(56%)、EGFR変異、EGFRコピー数・EGFR発現を解析できたのは各々437名(36%)、406名(33%)、及び365名(30%)であった(図3)。