WJTOG 3405、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を有する非小細胞がんに対する“イレッサ”対シスプラチン+ドセタキセルの比較第2相試験プロトコル

「本試験の集積症例数を再設定する。試験計画立案時の集積目標症例数の計算は、計画時に利用可能である情報に基づいて行うが、ほとんどの場合不確からしさを多く含んでいる。

 そのため、試験途中で明らかになった情報をもとに症例数の再設定が行われることがある。

 再設定を行うかどうか、さらには何例に再設定するかは、当該試験の内部データに基づく場合と外部情報に基づく場合の2つに大きく分類される。内部データに基づいて判断する場合には、あらかじめプロトコルに試験計画として記載されている必要があり、中間解析の枠組みで実施される。一方、外部情報は予測不可能な事象であり、事前に計画しておくことは実際的に不可能である。症例数再設定が必要になるような外部データが発表された場合には、当該試験の主任研究者ならびに試験実施組織で十分な検討がなされ、第三者的な効果・安全性評価委員会でその必要性が審議される。

 今回外部データとして、2008年ESMOにおいてIPASS試験の結果が報告され、EGFR遺伝子変異陽性症例サブグループにおいて“イレッサ”のカルボプラチン+パクリタキセルに対するPFSのハザード比0.48が示された。さらに、2009年ASCOにおいてNEJから“イレッサ”のカルボプラチン+パクリタキセルに対するハザード比0.357が示された。これらの結果をもとに症例数の再設定を行った。本試験のようにtime-to-eventを主要評価項目にしている場合、統計学的検定として使用を計画しているLog-rank検定の検出力は症例数ではなく観察されたイベント数に依存する。そのため、症例数再設定をイベント数の観点から以下のように行った。当初計画されていた中間解析を行わず最終解析の1回のみ解析を実施するため、複数解析の多重性を考慮する必要がなく、主要評価項目の解析に対する有意水準として0.05(両側)を用いる。検出力を90%とする。必要イベント数の計算には、慎重的立場をとり、IPASS試験で示されたハザード比0.48を用いる。Log rank検定統計量の構成方法から対数ハザード比の正規近似に基づき、ハザード比0.48の検出に必要な観察イベントは78と計算される。2009年3月時に実施された追跡調査において全イベントのextramural reviewが完了していないもののすでに79例のイベントが観察されていた。2009年6月末時点ですでにその時点から3カ月が経過しており、すでに必要イベント数を観察できていると判断することは常識的であろう。これらの計算および議論から主要評価項目の解析を実施する上ではさらに症例集積を追加で行う必要はないと判断できる。

[参考文献]
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18)西條長宏、連載イレッサ、ある分子標的治療薬の軌跡、「有効性を左右するEGFR変異の発見ーバイオマーカーー探索の紆余曲折」、日経メディカルCancer Review、38〜49、 2011年9月