献血後に判明したケースでは日本赤十字社から通知が届くが、その相談に応ずる体制が心もとない。「相談拠点として全国の保健所、がん診療連携拠点病院など全国どこでも同様の対応が得られるよう均霑化を進めるべきだ」と内丸氏は主張、厚生労働省の研究班を組織して、HTLV-1キャリアのコンサルトができる体制を検討、提言することにしている。

 感染を疑わず検査を受け、キャリアと判明する点では妊婦健診も同様だ。HTLV-1感染の主な経路が母乳を介した垂直感染にある以上、妊婦健診でHTLV-1を検査することは欠かせない。しかし、キャリアと判明した場合の体制はまだ不十分だ。妊婦健診には、授乳指導とキャリアのメンタルケアを含めた対応が必要になる。産婦人科・助産婦はもちろん小児科も含めた診療科の枠を超えた対応が必要になるケースもある。「カウンセリングが必要なケースも必ず存在する。血液内科医はもちろん必要に応じて精神科医の助力が得られる体制が重要」と内丸氏は話す。

拡大する感染に医療体制の遅れ
 2007年の日本赤十字社の初回献血者データに基づく抗体陽性者数推定によると、全国のHTLV-1キャリアの数は全国で1,079,000名。45.7%は九州・沖縄に分布しているが、17.7%に相当する190,600人が関東地方にいた。同様の方法で1990年に行われた調査では、九州・沖縄が50.9%に対して関東は10.8%だった。内丸氏は、「人口の移動に伴いキャリアの分布が全国、特に大都市圏に拡散する傾向にある(図2)。これまでの地域ごとの対応から全国レベルに対策を組み替える必要がある」と語る。

 キャリア分布が拡大するにつれ、無症候の時点での相談体制、さらに発症した場合の早期発見と治療を行う体制の整備がなお不十分である首都圏の状況が見えてくる。

世界的が注目する抗CCR4抗体
 ATLは最も治りにくいT細胞性腫瘍だが、治療技術は着実に進歩している。協和発酵キリンが名古屋市立大学大学院医学研究科特任教授の上田龍三氏、同大学院腫瘍・免疫内科講師の石田高司氏と共同で開発した抗体医薬KW-0761に現在の標準治療LSG15(後述)に上乗せ効果の有無を検証する臨床試験が進んでいる。既に患者登録を終えており、KW-0761併用による効果が確認されれば、ATL医療の大きな転機になると期待される。

 KW-0761はモノクローナル抗体医薬でCCR4(CC chemokine receptor4)を抗原としている。CCR4はATLを含む末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)で発現していることが報告され、しかもCCR4陽性のATL/PTCLは陰性に比べ皮膚などへの臓器浸潤が強く、予後不良であるとされている。KW-0761は、石田氏らが作成した抗CCR4モノクローナル抗体薬に抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を強化するために、フコースを除去するポテリジェント技術(旧協和発酵が開発)を援用して開発された。

 2010年の米国血液学会(ASH)で石田氏が報告した再発高悪性度ATL26例に対する第2相試験では、奏効割合は50%(完全寛解8例、部分寛解5例)。有害事象はリンパ球減少と皮疹などであったが対処可能なレベルにとどまった。協和発酵キリンは、この成績をもとに厚生労働省に販売承認申請中であり、近く承認される可能性が高い。