完全寛解論法は“風が吹けば桶屋が…”の論法か?
 角南氏が全例に使用を主張する根拠として挙げた点は、表3のようになる。一方で対抗する高松氏が挙げた理由は表4のようになる。最も根本的な争点は、CRに持ち込むタイミングが早くなれば早くなるほど、あるいは奏効率が上がれば上がるほど、生存期間の改善効果も顕著になると主張した角南氏に対して、高松氏は「それは、風が吹けば桶屋が儲かるという話。新規薬剤を用いた初回治療を行い高い奏効率が得られた場合、本当に完全生存期間は延長するのか」と疑問を呈し、“対決姿勢”を鮮明にした。

表3● “全例使用”の根拠として角南氏の主張

≪移植適応≫
  • ・すべての症例はCRを目指すべき。Upfrontで新規薬剤を使用した強力な治療法でCRに持ち込めば予後も改善する。

  • ≪移植非適応≫
  • ・従来の標準化学療法ではMP療法を超える治療法はなかったが、その中でもCRに到達症例は到達しなかった症例よりもOSが延長していた(KyleRA et al. Cancer 2006)。
  • ・新規薬剤導入後でもCRに到達した症例のPFSおよびOSは延長していた(Gay F et al. Blood 2011)。
  • ・新規薬剤はCR導入率が高く、実際、標準化学療法との比較試験においてサリドマイド、レナリドマイド、ボルテゾミブ治療は有意にPFSやOSの延長が得られている(Fayers PM et al. Blood 2011, Zonder J et al. 2011,Mateos MV et al. J Clin Oncol 2010)。
  • ・従来のMP療法のように病勢をコントロールする治療から、初回から新規薬剤を用いて積極的にCRに導入する治療を行うことにより、さらにPFSやOSを改善させることができる。
  • 表4● “全例用いる必要はない”の根拠としての高松氏の主張

  • ・CRが得られれば生存期間が改善する。だからCRを目指すというのは3段論法に過ぎない風が吹けば桶屋が儲かると同じ。・CRが全生存期間の指標になるというのはCRを過大に評価している。
  • ・サリドマイド+デキサメタゾン療法(TD)とデキサメタゾン単剤療法(D)を比較すると、奏効率はTDが高いが全生存期間に差がつかない。
  • ・レナリドミド+デキサメタゾン(RD)とレナリドミド+少量デキサメタゾン(Rd)では奏効率ではRD療法がRd療法を凌いだがだが全生存期間ではRD療法はRd療法を下回った。RD療法で血栓症など有害事象が多発したことが原因。
  • ・多発性骨髄腫の患者には高齢者が多く、治療強度を高めても予後を改善しない可能性がある。
  • ・17p-など染色体異常を持つ例では自家造血幹細胞移植を行っても予後は改善しない。ボルテゾミブは予後不良染色体に有効。ただし、レナリドミドは染色体17qを決失した症例には効かない。この群は新規薬剤をupfrontに使うべき。
  • ・予後不良染色体を持たない症例では普通の抗がん剤でも102カ月も生存。
  • ・初回治療、強化、維持療法、再燃後の2次治療までの長期展望にたって治療を考えるべき。抗がん剤の反応が良好な群では新規薬剤は温存して後で使ってもよい。層別化すべきである。
  • ・若年患者については新規薬剤を使ってCRを求めるべき。
  •  角南氏の主張は、自家造血幹細胞移植を行ってCRに導入できた症例はPFS、OSともに延長しており、寛解導入時点でCRを目指すべきであるとした。さらに新規薬剤を使用した1,175名の高齢移植非適応症例を解析した結果(Gay F,Blood.2011、117(11):3025-31)を紹介しながら角南氏は、「移植非適応患者においても、CRに導入できた症例ではPFS、OSともに延長する」と結論している。

     一方の高松氏は、MPT療法とMP療法を比較したメタ解析(Kapoor P,Leukemia2011、24,689)などを引用し、「移植非適応の初発患者では奏効率はサリドマイドを使ったMPT療法が優れていたが、全生存期間は両群間で差がなかったとする報告が多い」と語った。高松氏の結論は、シンポジウムのタイトルそのものといえる。つまり、初回治療よりも新規薬剤を用いるべき患者と使わなくていい患者を層別化すべきというものだ。