名古屋市立大学病院の飯田真介氏。

 2011年10月に名古屋で開催された第73回日本血液学会学術集会では、「未治療症候性骨髄腫患者さん全例に初回治療から新規薬剤を用いるべきか?あるいは非奏効例やハイリスク例に限定すべきか?」という異例に長文のタイトルがついたシンポジウムが、会場となった名古屋国際会議場のメーンホールで開催された。シンポジウムの企画者の1人で司会を務めた名古屋市立大学腫瘍・免疫内科学分野・准教授の飯田真介氏はシンポジウムの狙いを「欧米で良いデータが出ると日本では大挙して使用される傾向がある。日本人における標準治療は厳密にいえば確立しておらず、警鐘を鳴らすことが目的だった」と語る。タイトルが長文化した理由は「議論のポイントを絞るために条件を具体的につけたため」ということになる。

 シンポジウムはプロ・コンスタイルで行われ、「使う」という立場から岡山医療センターの角南氏が、「新規薬剤を全例に使う必要がない」という立場から、福岡大学病院腫瘍・血液・感染症内科准教授の高松泰氏が論陣を張った。日本国内で現在までのところ、多発性骨髄腫の治療薬の「新薬」というカテゴリーに該当するのは、サリドマイド、レナリドミド、ボルテゾミブの3種類しかない。これら3剤の中で未治療症例への使用が承認された薬剤はボルテゾミブのみ。討議ではサリドマイドやレナリドミドの臨床試験のデータも主張の根拠として引用されたが、実質的には「未治療症例にボルテゾミブを使用するかどうかが討議されたということができる。

トピックス1
新規薬剤の登場で同種骨髄移植件数は減少?
千葉大学医学部附属病院の中世古知昭氏。

「同種骨髄移植に対する共同研究を今後も推進すべきだろうか」

 2011年11月13日に東京で開催された第36回日本骨髄腫研究会のシンポジウムの席上、千葉大学医学部附属病院血液内科科長の中世古知昭氏は、演壇から会員に向かって問いかけた。中世古氏がいう共同研究とは「再発・難治性多発性骨髄腫に対する用量減量前処置を用いた同種移植後のbortezomibに対する維持療法第2相試験」。多発性骨髄腫の治療成績は新薬の導入によって向上してきたが、現在の状況では治癒を見込むことができない。治癒をもたらす可能性がある唯一の治療法が同種骨髄移植だ。海外では同種骨髄移植の後にボルテゾミブの投与によって生存期間が改善し、移植片対宿主病(GVHD)の増悪もなかったと報告されている(Hematoogica 2008;93(3):455-8)。

 そこで、研究会では中世古氏を中心に、日本人を対象にした検証のために臨床試験を計画した。自家骨髄移植やサリドマイドなどの新規治療を行ってもVGPR(Very Good Partial Response)以上の効果が得られなかった症例、あるいは再発例に、用量減量処置を行った同種骨髄移植を行い、その後に再発率を抑えるためにボルテゾミブを維持療法として使用し、有効性と安全性を見ようという試験だ。

 ところが、新規薬剤が導入される以前と比べ、新規薬剤の導入により同種骨髄移植を行うケースが減ってきた。今回、ボルテゾミブが初回治療に使うことができるようになり、ほかのサリドマイドやレナリドミドでも同様の適応拡大が進む可能性が高い。そうなれば、同種骨髄移植の施行は一層減少が予想される。この事態に、中世古氏は、「新規薬剤が導入されて以後の多発性骨髄腫に対する同種骨髄移植の動向と成績についてアンケート調査を行うことを検討している。

 奏効率が高く新規薬剤を使うべきか、それとも治癒可能性にかけて同種骨髄移植を温存すべきか。専門医らは岐路に立っているといえる。