―第3期からは、高校生までの子どもがいる方をも対象に入れましたね。

橋本 「子どもの問題は子供手当でカバーしてもらおう」とし、当初は対象にする考えはなかったのですが、「高齢者の優遇に偏り過ぎていて、子どもに回っていないところが日本の社会保障の大きな問題ではないか」という意見を聴き、考えを改めました。

―対象患者もCMLに加え、骨髄異形成症候群(MDS)とGISTに拡大しています。CMLとGISTにはイマチニブの適用がありますが、MDSにはありませんね。

橋本 助成条件にイマチニブを使っていることを入れていません。現在、助成を受けているCML患者さんにもイマチニブ以外の治療薬を使われている患者さんも含まれています。あくまでも高額療養費の44,400円を支払い続けることが厳しい人を支援するための基金です。今後は多発性骨髄腫などの疾患も対象としていきたいと思っています。

―ノバルティス以外の製薬会社が基金に参加することはありえないのですか。

橋本 私も何社かには声をかけましたが、現時点ではありません。

「イマチニブ無償化ではハワイに行けなくなる」

―少し前にCMLを特定疾患に指定しようという声もありました。

橋本 私は反対です。それをすると、世間の目が厳しくなり、CMLやGISTの患者さんたちは小金を貯めてハワイに行けなくなります。がん患者さんたちは辛い毎日を送っています。だから、がん患者でもハワイに行けるではなく、がん患者だからこそハワイに行かなければいけないのです。

 2001年にイマチニブが登場して、CML患者さんの多くが安定期に入り、つばさの会合にやってくる患者さんたちは本当に生き生きとしていました。その人たちの中に、リーマン・ショックを境にお金のことで深刻に悩むようになってしまった方々もいらっしゃいます。イマチニブの使用を止めるということは緩慢な自殺ですから当然です。

全国の企業が利益の1%を拠出すれば

―つばさ支援基金のスキームでは、基本財源を増やしていかなければなりませんが、一般化して血液がん以外の患者さんの助成にまで拡大していくことは可能でしょうか。

橋本 私は実践家であって研究者ではないので、とても単純に考えています。つばさ支援基金の仕組みをほかのがんに広げていったら良いと思うんです。この素人の私がその大基金を運営するということではなく、行政・産業が一体化して実施してもらわなければなりませんが、財源は全ての企業の利益の1%を拠出してもらえば可能ではないでしょうか。今年は国民皆保険制度が誕生して50年です。50年前には想像されていないような高額な医療が登場していますが、なんとしてもこの制度を守りたいんです。

―国はあてにしないのですか。

橋本 私はかつて、骨髄バンクという制度を国で作って下さいとお願いし、曲がりなりにもそれを実現しました。高額療養費制度の改訂をお願いすることになったわけですが現状ではすぐに「財源はどうする」という話になってしまいます。今までもいくつかの政府の審議会で、経済困窮患者の救済の議論を見守ってきましたが、最後は「財源がない」というところで止まってしまう。そうなると私たち市民はもうお手上げです。 

 それに新しい制度を作るということにはどうしても時間がかかります。長男がCMLを発症したことを契機に、私は骨髄バンクを立ち上げる運動に関わりました。自分でもとても熱心に活動したつもりですが、ようやく骨髄バンクができて、その発足の記者会見があったときには長男はもう急性転化していて、2カ月後には他界しました。制度の立ち上げを国に働きかけても、現在困っている患者さんを救うことは難しい。国への提言は大切ですが、民間でできることがあるなら、やる。それが大切だと思っています。